人生ゲーム(ルールの外という選択)

雄二 「あ~、もうやんなっちゃうなぁ。政治とか、安全とか、、この世の中はどうなっているんだ!」

ソラディス 「その世の中を創っているのは自分だろう?」

雄二 「はぁ?!、この世の中を創っているのは社会だろう、政治だろう?政治家が悪いんだ。金持ちが支配する世の中が悪いんだ。」

ソラディス 「その環境を選択しているのは自分だろう?」

ソラディスは微笑みながら自分の目をじっと見つめた、、、

その後に何が起こったのかはわからない、、
ただ、気づくと自分は子供に戻っていた、、

そして友達と遊んでいる。
そこに一風変わったおじさんが現れ、なにやら箱を取り出し、自分たちに差し出した。

「君たち、これをやってみるかい?」
箱には『人生ゲーム』と書かれている。何やら不思議なゲームで、子供たちは妙にそのゲームに引き寄せられた。

子供たち 「うわ~、超面白そう!やろう、やろう!」

そのゲームはお金を一番集めた人が勝ちというルールで、サイコロを振って出た目の数だけ進むボードゲーム形式だった。
そしてそのゲームの特徴的だった所は、『特権』と呼ばれるシステムがあることだった。
それは後にゲームをする子供たちの感情を激しく揺さぶるものだった、、、

初めに参加者内で役割を決めた。
ゲームの参加者は四人で、それぞれ次のような役割になった。
銀行役、政治家、警察、市民。

雄二は市民役だった。
そして普通のスゴロクの感覚でゲームは始まった。

特急の切符が手に入った、3マス進む
スキーで骨折、一回休み
宝くじが当たった、100万ドル入手、、、

銀行役のAの順となり、サイコロを振ると、「財布を拾う 1500ドル」と書かれていた。
銀行(お金が入っている箱)から1500ドルを取り出そうとすると、その箱内部で何か光っている、、、
なんだろうと思ってみてみると、こんなことが書いてある。
「1500ドルのフリして15000ドル取っても良い。銀行家のみが出来る特権である」

Aは驚いた!「何だこれ?!」
どうも自分だけにしかこの光は見えていないようだ。
Aは少し迷ったが、1500ドルだけ取って次の人にサイコロを渡した。

ゲームが進んでいくと、次第に政治家役のBが優勢となってきた。

そしてまた銀行役のAに先ほどの光が見えた、、
「給料日に、必要経費として5万ドル余計に貰っても良い。これは銀行家の特権である。政治家には政治家の特権がある。」

Aはふと思った。
「政治家役のBはこの『特権』を、使って一位になっているんじゃないか?」
そしてビクビクしながらも自分の『特権』を使用した。

その後もちょくちょく特権を利用した銀行役のAが次第に優勢になると、政治家役のBは苛ついてきた。
そして凄いことを言い出した。
「現在一位の人は、資産の50%を高額所有者用の特別税として国に収めなくてはならない」

銀行役のAは反論した。
A 「はぁ?なんでそんなことしなきゃいけないんだよ。」

それに対してBは言った。
B 「ルールを決めるのは政治家役の自分だ」
そしてゲームのルールブックを提示し、そこには確かに「政治家はゲーム内のルールを自由に決めることが出来る」と記載されていた。

Aは気づいた。「これが政治家の『特権』か、、、」

その後もゲームは進行したが一位争いは常にAとBの間だけであった。
市民役の雄二は不公平感を強く感じるようになってきた。
”このまま続けても絶対自分は一位にはなれない、、、政治家とかズリーよ!”
そんな時に雄二にも光が見えた!
『特権』の出現だ。

特権 「気に入らない場合、今の政治家を下ろさせるための行動を起こすことが出来る。成功すれば自分が政治家になることも出来る。」

雄二 「マジか!」
特権を発動させ、雄二は政治家役のBを下ろすように行動を開始した。
しかし、残念ながらその行動は上手く行かず、警察役のCに逮捕されることになった。

行動を察知した政治家Bは様々な手を打ち、市民の雄二の動きを封じることに成功したのだ。
雄二はゲームから脱落しないようにするのが精一杯で、とてもゲームを楽しむどころではなかった。

雄二は無性に腹が立ってきた。
「なんで市民はいつもこうなんだ!」
体は子供に戻っていたものの、大人になった時の自分の考えはそのまま残っていたのだ、、、

そんな時にまた光が見えた。『特権』発動だ。
「ちっ!市民の特権なんてどうせ大したもんじゃないんだろ!」

不満ながらに特権に目をやった雄二は固まった。
今回見た特権はゲームの根本を揺るがすような内容だったのだ。

「あなたはなぜこのゲームをしているのか?なぜこのゲームを始めたのか?あなたはいつでもゲームから抜けることが出来る。そしてそれはゲームのあり方自体に大きな影響を及ぼすことになる」

ゲームにのめり込み、ケームに勝利することばかり考えていた雄二は深く考えさせられた。

俺達はなんでこのゲームをしているのかって?
そりゃあ、面白そうだと思ったからだ。でも、よく考えると誰も楽しそうではないな、、、。

雄二はすぐに答えをだすことは出来ず、ゲームを続けながら考えることにした。

銀行役のAも、政治家役のBも何だか顔が怖いな、、、。警察役のCも楽しそうじゃないし、、ゲーム始める前のほうが良かったな、、、

考えた結果、雄二はゲームから降りることにした。
自分の番が来た時にそれを宣言すると、銀行役のAと政治家役のBは猛烈に反対した。

雄二はなぜ彼らがそれほど強く反対するのかその時はわからなかったが、後に聞いた話では、市民役がゲームから抜けると、銀行役や政治家役の『特権』というのはほとんど効果がなくなるシステムだったようで、彼らはそれが気に入らなかったらしい、、、。

政治家役のBは強い口調で言った。
「警察役のC君、雄二くんにゲームの進行を妨げないようにちゃんと指導しなさい!」

前回雄二を逮捕したC君の対応は、今回はまるで異なったものとなった。

警察役のC 「Bさん、私は雄二くんは悪いことをしているとは思いません。自分は雄二くんの行動を応援こそすれど、逮捕などは出来ません」

Cも『特権』を発動したのだ。
Cの『特権』は以下の様なものだった。
「基本的には政治家の命令に従う義務があるものの、本当におかしいと思った場合には命令を拒否することが出来る。その行動は社会の流れさえも変えうる尊いものである。」

そしてCは言った。
「ゴメン、俺もゲームを降りるよ。」

雄二とCが抜けた後もAとBはしばらくゲームを続けていたが、、段々と二人も続ける気がなくなってきた。
市民役と警察役が抜けた後に出現する『特権』は大したことなかったし、自分が勝つためには相手を蹴落とすような『特権』を発動することでかなりピリピリした雰囲気になってしまったことに嫌気が差してきたのだ。

外では雄二とCが楽しそうにサッカーをしている。
BはCと目を見合わせた。
二人共、ゲームをやめようという気持ちが同じであることを確認し、ゲームは終了した。
そしてサッカーに加わり、四人で元通り仲良く遊びはじめた、、、、。

「はっ!」
気づくと雄二は目が覚め、大人の自分に戻っていた。
目の前ではソラディスがにっこりと微笑んでいる。

ソラディス 「もう一度聞くよ?従わなければならないと雄二が考えている、この世の中のルールを作っているのはいったい誰なのかな?」