さとし:「僕強くなりたいんだ。もう負けるのは嫌だ!ねぇ、どうすれば強くなれるの?」
ソラディスはやさしい口調で答えた。
ソ:「さとし君、『強い』ってどんな事を言っているのかな」
さとし:「そりゃあ、誰にもやられずに、挑んできた奴らはやっつけ、ギャフンと言わせられることだよ。」
ソ:「それでは、勝つって何かな?負けるってなんだろう?」
さとし:「勝つっていうのは、相手より自分のほうが優れている、勝っていると証明することかな。負けはその逆。」
ソ:「それは言い換えると、自分の価値を認めてもらえたのが『勝ち』で、認めてもらえなかったのが『負け』とも言えるのかな?」
さとし:「う~ん、、、まぁ、そうなのかも、、」
ソラディスは答えた。
ソ:「だとすれば、、、誰に何を言われようが、何をされようが『自分の価値は揺るがない、自分は誰しもに認められた存在なのだ!』と思えたとしたら、さとし君の言う『負け』というものはなくなるんじゃないかな?」
さとし:「え??どういうこと?」
ソ:「例えばかけっこで競争をしていたとする。そして相手より自分が遅くゴールしたとする。しかしここで『足が速かろうが遅かろうが、自分は自分であり、皆に愛される存在なのだ』ということをしっかりと認識していたとすると、勝ち負けなんかはまるで気にならないものになる。相手に嫉妬したりすることもなくなり、自分が屈辱感を味わうこともなくなる。」
さとし:「でも、やっぱり負けるのはやだな。とくに皆の前で負けるなんて言うのは。」
ソ:「うん、そうだろうね。その気持が克服できた時、本当に強くなったと言えるんだ。自分が言っている意味を理解してもらえるまでは時間がかかるかもしれないけどね。」
「強いとは勝つことではない。何事にも揺るがない心を持っていると言うことなんだ。それがあれば勝ちや負けなんて概念は無くなるんだよ。」
サトシは黙って聞いていたが、まだ納得できたわけではなかった。
ただ、ソラディスを見ていると、確かに彼なら勝ちや負けなんか気にしなさそうだと思えた。
ソラディスがかけっこ競争をして負けながらも、勝った人と笑顔で話している、、、そんな光景が浮かんだのだ。そしてそんなソラディスが『弱い』とはとても思えなかった。
「強いとは勝つことではない。何事にも揺るがない心、か、、、」
サトシはちょっと気持ちが楽になったのを感じた。