優しさって何? ~ストレートで愛情に溢れる~

「ヘーブ星の人はいつも優しいの?」

 

「優しい?皆、いつも愛に溢れているよ。でもただ、地球人の言う優しいというのとは結構違う。」

 

「どういうこと?」

 

千鶴とソラディスが話している時、ちょうど目の前で6歳ぐらいの男の子が道で転んだ。そこに母親が駆け寄り、優しく抱きしめながらなだめている 。 「おーよしよし」

 

「千鶴、君の言う優しいっていうのはああいうやつだろう?」

 

「うん」

 

「ヘーブではああいう時、皆で笑ったりする」そう言ってソラディスはニヤリと笑った。

 

「え?!それって酷くないですか?!」千鶴は優しいと思っていたソラディスの意外な言葉に驚いた。

 

「考え方の違いだね。ヘーブでは転ぶことを悪いこととは考えていないんだ 。転ぶという経験をした事を皆で喜ぶんだよ。 」

「ちょっといいかな?」

 

そう言ってソラディスは千鶴の額に手を当てると、千鶴の頭の中にはこんな光景が浮かんできた。

 

「え、何これ?」

 

公園のようなところで人々がくつろいでる。これはヘーブ星なのだろうか?芝生のような斜面を男の子が走っている 。

「パパ~、ママ~!」

家族の名前を呼びながら男の子はすごい勢いで坂を駆け下りている。

この子転んじゃうのかなと千鶴が思ったその瞬間 、、、

 

その子(キュイー)は見事に転んだ。

すると「おお、キュイー、やったな!」というような歓声が起こり、「ワッハッハッハ~」と叫びながら、倒れているキュイーの方に走り、サッカーのスライディングのような感じでキュイーの横に倒れこむ男性もいた 。

母親と思われる女性も「ふふふ」と微笑みながら小走りで子供の元に駆け寄っていく。

 

「え、え?何これ?」

 

子供が転んだというのに周りの人々は明らかに喜んでいる !!

それに転んだ男の子も泣くどころか、なんだか誇らしげだ 、、、

 

戸惑う千鶴にソラディスは説明した。

 

「へーブでは『人生は学び』だと誰もが思っているんだ。だから学びを得ることができた時は皆で喜ぶんだ。」

「地球の人から見たら転ぶことは災難と思うかもしれないね。でも、。ヘーブ星ではそれは学びだととられる。」

「次、転ばないようにするための知見を得たり、転んでも痛くない方法を考えたり、他の人が転ばないような環境を創ってあげたり、、、、転び一つからでも、様々なことが学べるということを知っているんだ。」

「こんな風に考えているから、地球人から見たら冷酷だと思われるようなこともするよ。自分も地球人が言う基準で優しいかどうかと言うと、優しくはないんじゃないかな。」

 

ソラディスの言葉に対し、千鶴は答えた 。

 

「え、ソラディスは凄く優しいですよ。愛情をすごく感じますよ?」

 

「ヘーブ人は優しいのではなく、ストレートで愛に溢れているんだ」

「それが相手の学びのためになると思えば、倒れている人に手を差し伸べさえしない。ただ『あなたは自分の力で起きなさい。あなたにはそれができる!』と伝えたりする。」

「へーブではこれは冷酷だとはみなされない。誰もが当たり前だと思っている。相手の深い愛情に気づいているから。倒れている人もそれをわかっている。」

「優しいだけでは成長の機会を失うことが多い。学びには覚悟が必要なことが多いが、その覚悟を得にくくするからね。」

 

ソラディスの話を聞き、千鶴はう~んと唸った 。

 

「やさしいって何だろう?」

いろいろな思いが頭の中をぐるぐる回ってきた 。

「人には優しくしなきゃとか考えたりしているな、私。それって良いことだと思っていたけど、実は自分が傷つきたくないからそうしているのかもしれない、、、」

「本当はこうしたら良いんじゃない?とか思ったりするけど実際は口に出せないもんな、、、、。相手を傷つけたくないから。」

「確かにそんな『優しさ』、、愛にあふれてなんかいない!相手を傷つけたくないからとか言いつつ、相手に嫌われることを自分が恐れているから言ってないだけだ、本当は、、、。ソラディスだったらストレートに言うんだろうな。私に言ったように。」

 

千鶴は以前、ソラディスに悩み相談をしたことがあり、その時ソラディスにズバリと言われた経験があった。

 

「あなたは相手のことを一方的に悪い人だと思いこんでいる。自分は被害者だと思いこんでいる。そのままではあなたは一歩も進まない。相手の気持に気づき、相手を愛で包み込めるようになれば、あなたが今問題だと思っているものは氷解する。それをするかしないかはあなた次第だ。」

 

自分の辛い過去とかを話せば、普通は優しくヨシヨシしてくれるかななんて千鶴は思ったが、ソラディスはそうではなかった。

でも、、

ソラディスは愛情にあふれていた。それを千鶴ははっきりと感じたため、ソラディスを冷たいとは感じなかった。背中を押してくれているのだということがわかっていたのだ。

千鶴はそんな事を思い出しながら、心の中でこうつぶやいた。

 

「優しいかどうかなんて気にしないで、私も愛に溢れた行動をとろうっと!」