サトシとソラディスは寒風が吹くなか、石垣に腰を下ろして話していた。
サトシは日々の生活に満足できていない様子だった。
サトシ「あ~、やる気おきねぇな~。ソラディス、俺のやる気スイッチ押してくれよ。」
ソラディスはそれには答えず、逆に聞いた。
ソラディス「寒いのですか?」
サトシ「へ?あぁ、寒いけど?」
ソラディス「サトシ、あなたにピッタリの服がある。それを今から取りに行きましょう!」
ソラディスは訳が分からず困惑気味のサトシを引き連れ、背後にあった山を登りだした。
サトシ「おいおい、どこまで行かせる気だよ。まだつかないのか?」
ソラディス「フフフ、もうちょいですよ。もうちょい^^」
結局二時間弱も登り続け、ようやく小高い山頂に辿り着いた。
サトシ「で?その服は何処にあるんだ?」
こんなところに服なんかあるはずないだろう?という不満げな様子で言った。
ソラディス「その服なら、もう既に着ていますよ^^」
サトシ「はぁ?冗談にしては笑えないぞ!こんなに歩かせやがって!」
ソラディスは微笑みながら、ゆっくりと話し始めた。
「サトシ、あなたの額には汗が滲んでいる。寒い寒い!とガタガタ震わせていた体から蒸気が上がっている。これがどういうことかわかりますか?」
サトシ「そりゃあ二時間も山を登り続ければ暑くもなるだろうよ!」
サトシはかなり不満顔だ。
ソラディスは涼しい顔で続けた。
ソラディス「そう!まさにその通り!そして、、、やるきスイッチもまったく一緒なんですよ^^」
サトシ「へ?どういうことだ?」
サトシの顔は急に引き締まった。
ソラディス「サトシ、あなたは寒い時、服を着て温まろうとしました。しかし、自ら『山を登る』という行動をした時、服はあなたの内側から現れ、あなたを温めてくれました。」
サトシ「・・・・」
ソラディス「あなたはやるきスイッチを押してくれと私に頼みました。それは服を着て温まろうとするのと同じなんです。あなたは服を求める必要はないんです。もっとずっと良い服があなたの内側から現れるのですから。」
サトシ「う~ん、、、さっぱりわからない、、、」
ソラディス「あなたはやる気の向上を外部に依存しようとしている。そうではないのです。やる気はあなたの内側から自然に湧き出るものなのです。」
サトシ「それはわかるけど、内側からやる気が湧き上がらないから悩んでいるんじゃないか。」
ソラディス「サトシ、恋をしたことはあるでしょう?その時の感覚を思い出してみてください。」
サトシ「恋、、、」
ソラディス「好きな人のために進んで何かをしてあげたいと思いませんでしたか?行為そのものよりも、相手を喜ばせることだけを考えてはいませんでしたか?そしてその時、やる気は全開ではなかったですか?」
サトシ「・・・・それはそうだな、、。」
ソラディス「今サトシがやる気が起きなくて悩んでいるものはなんですか?なぜそれをしなくてはならないのですか?恋をしていた時との違いは何だと思いますか?」
サトシ「う~ん、、、なんだろう?」
サトシはウンウン唸りながらしばらく考えていた。
そしてゆっくりと口を開いた。
サトシ「恋をしていた時は、ただただ相手に喜んで欲しい!としか考えていなかった。その作業が辛いかどうかとか、損得勘定とかそんなのはまるで考えていなかった、、、。」
「でも今やっていることは、、自分のメリットになるかどうかだけを考えている。労働に値する対価が得られるかどうかばかり考えている、、、」
ソラディス「サトシ、やるきスイッチなど無いことがわかりましたか?敢えて言えば、やる気減退スイッチを自ら押しているといった感じでしょうか。」
サトシ「やるきを出そうと思って自己啓発書を読んだり、セミナーに参加したりしていたけど、、それらは全て外側から自分を温めようとしたのと同じことだったということか?それがソラディスの言いたかったことか?そんなことよりも自分の内側から温めるように、やる気が自然とほとばしるような状況にしろということか?!」
サトシは興奮気味に言った。
ソラディスは嬉しそうにニコニコしている。
「やるき全開の状態というのはわかりましたか?恋をするように生きるということです^^」
サトシ「恋をするように生きる、、、。うーむ、、、何だか難しいけど気をつけてみるか」
ソラディス「アハハ、考えない、考えない。サトシは考えて恋なんかしなかったでしょう?」
サトシ「それはそうだな、アハハ」
サトシは何だか、ちょっぴり心が軽くなった気がした。