千鶴は怒りに身を震えさせていた。
夫が全然真面目に話を聞いてくれないのだ。
くだらないことで口論となり、それ自体は大したことでは無かったのだが、その際の夫の態度を見ていたらなおさら腹が立ってしまったのだ。
”何なの、その態度!!”
夫は自分の方を見て笑っているのだ。
千鶴は自分がバカにされた気がして、怒りがこみ上げてきたのだ。
こんな事が既に10年以上続いている。
千鶴は何だか悲しくなった。
千鶴はソラディスの元を訪ね、自分の悩みを打ち明けた。
ソラディスは聞き終わるとフフフと笑い出した。
真面目に話しているうちにソラディスも笑い出したのだが、千鶴は不思議とバカにされた気持ちにはならなかった。
ソラディスは優しい声で尋ねた。
ソラディス「千鶴さん、貴方が真面目に話している時に旦那さんが笑うのを見て怒りがこみ上げてきたのはなぜだと思いますか?」
千鶴「え?バカにされた感じがするからです。自分が真面目に話しているときは、真面目に聞いて欲しくて、、」
ソラディス「なぜ、真面目に聞いてほしいと思うかわかりますか?」
千鶴「え?!・・・・『なぜまじめに聞いて欲しいか?』」
千鶴は適当な答えが浮かばず、色々な答えを頭のなかで考えていた。
ソラディスはただ微笑んでいる。
千鶴は整理がつかないままに答えた。
千鶴「やっぱり、真面目に話しているときは、相手にも真面目に聞いて欲しいと思うから、、、」
先ほどの答えにまるでなっていないことはわかっていたが、やはり適当な答えは見つからなかったのだ。
ソラディス「自分が真面目なら相手にも真面目に、、、、これはどういうことを意味するかわかりますか?」
千鶴「・・・」
ソラディス「相手に自分の方をしっかり向いて欲しいということではないでしょうか?自分としっかり向き合って欲しいと、、、」
千鶴「そうですね。」
ソラディス「それでは、なぜ千鶴さんは旦那さんにしっかり自分の方を向いて欲しいと願っているのかわかりますか?」
千鶴「え?う~んと、、、自分の事も考えて欲しい、自分の気持も理解してもらいたいからかな?」
ソラディス「そうです!自分でもわかっているじゃないですか^^貴方は旦那さんに自分の事をしっかりと理解して欲しい!と心から願うから、それが魂の叫びとなり、怒りという感情として現れてきているのです。」
「さて、喧嘩や口論というのは一人では出来ませんね?同じように相互理解というのも一人では出来ません。千鶴さんがそれほどまでに『自分の事を理解して欲しい!』という気持ちを強く持つのであれば、旦那さんも同じように千鶴さんに『理解して欲しい!』と思う気持ちは理解してあげれますね?」
ソラディスはいたずらっぽい表情で話した。
そしてこう続けた。
なぜ相手が真面目な話中に笑ったりするのか、、、。自分の事をわかってもらえていないと思うのが自分だけでなく、相手も同じだとしたら、、、
「自分の事ばかり言って、俺のことはまるで聞いてくれないんだな!」なんて感じたとたら、それは『笑うしかない』状況を生み出すかもしれませんね。
「もし、本当に相手のことが理解できるようになったとしたら、、、いま千鶴さんが持っているような『怒り』の感情は発生なんかしなくなりますよ^^」
千鶴には思い当たるフシがあった。
これまで何度も何度も同じことを繰り返してきた。
繰り返せば繰り返すほど、アホらしく、自分が嫌になり、更には相手にも嫌な感情をもってしまうという悪循環だとも強く感じていた。
「真面目に!」なんて言っていた千鶴自身に、思わず笑いがこみ上げてきた。
「『相手のことを真に理解』か、、、難しいけどちょっと気にしてやってみようかな」