『幸せの国』と『善悪の国』
善悪の国
昔あるところに『善悪の国』という国がありました。
そしてそこには人が幸せに暮らせるためにこんなシステムがありました。
善と悪と呼ばれるシステムです。
『善』とは人々が心地よく感じるもの事を形容する言葉であり、『悪』は人々が不快に思う出来事などを形容します。
この国では子供の頃から徹底的にこの善悪という概念を植え付けられました。
「善いことをしなさい。悪いことはしちゃダメよ!」
多くの人々は善き人であろうとしますが、中には悪いとみなされる行為をしてしまう人も現れてきました。
それは些細な喧嘩であったり意地悪だったり、必ずしも悪人になろうと思ってやっているわけではなく、思わずやってしまった、、というケースも多くみられました。
その国では相手から『悪』とされる行為をされると、多くの場合、そのされた側の人は気分を害しました。その行為自体が不快だったのもあるでしょうが、恐らく、その行為自体が『悪』だと教え込まれていたからというのも理由の一つだったでしょう。
報復システム
この国のすごい面白いところは、「『悪』の行為をされた人は悪の行為をし返しても良い」と考えていたところです。
悪の行為はしてはいけないと教えながら、相手の方からしてきた場合には、特別に悪の行為の仕返しをしてもよいということになっていたのです。
この仕返しは『報復』と呼ばれ、悪の行為とはみなされないという特別ルールだったのです。
この報復システムの導入により、この国においては、善のみを行う人々の割合は次第に減っていきました。
そして、報復が報復を呼び、次第に国を挙げて全員が大きな悪の行為をするようになっていきました。
互いに物を奪いあったり互いに殺し合いをしたり、、、、
ある子供の決心
話し変わって、その国にはトーイという男の子が住んでいました。その子は学校で部活動に所属しており、そこでは先輩が後輩を理不尽に扱うということが日常的になされていました。
トーイも先輩から理不尽な扱いを受け、嫌な思いをしました。
自分よりも力の強い先輩たちに歯向かう勇気のないトーイはこのように考えました。
「くそ、、、俺も学年が上がったら下級生に威張ってやるぞ!今は我慢だ。」
この頃にはものすごい面白いことに、『報復』は知らないうちに、次の順番の人に回してもよいという風に拡大解釈されるようになっていたのです。
実際にトーイは学年が一つ上がると、自分の下の学年の人に威張り散らすようになりました。
『報復』を初めたのです。
しかしトーイはあまり嬉しくありませんでした。あまり気持ちの良いものではなかったのです。
下級生からはもちろん嫌われました。
自分より上の学年の人からは相変わらず威張られています。これまた気持ちのいいものでありませんでした。
トーイは考えました。
「何でこんなにみんなギスギスしているんだろう?」
「先輩たちは何で俺たち(下級生)に威張るんだろう?もしかしたら、先輩たちもその先輩たちに威張られたからじゃないかな?そしてその先輩たちはさらにその先輩たちから威張られたのではないか?だとすると、、、、これは無限ループじゃないか!!」
子供の頃から当たり前とされていた報復システムにトーイは疑問を抱くようになりました。
「皆、報復のことばかり考えている。いつもいつも悪口ばかり、、、。いつもいつも相手を非難してばかり、、。報復は悪ではないと言うけど、だからって、皆がいつもそんなことばかり考えているのって、なんかおかしくないか?」
そして、、、ついにこんな決心をしたのです。
「俺はこんなループを断ち切ってみせるぞ。下級生に優しくしてあげよう。先輩たちにはこのルーブが意味ないことを知ってもらうように働きかけてみるぞ!」
自分に優しくしてくれる人に優しくしてあげるのは簡単です。
自分を攻撃してくるような人に優しくしてあげるのは、それほど簡単ではないかもしれません。
しかし、トーイはその強さと覚悟を持っていたのです!
幸せの国
以上が『善悪の国』のお話でしたが、これとは別に『幸せの国』というものもありました。
この国においては全てにおいて、『幸せ』を基準に物事を考えていました。
もちろん善悪などという概念は存在しません。
ただ純粋に、皆が幸せになることだけを考えていたのです。
人々は助け合い、補完しあっていました。皆それぞれが、自分たちの個性を活かし、得意分野を発揮しながら活き活きと暮らしていました。
『善悪の国』ではすべてを善悪で線引し、悪とみなせば、それを除外するような動きがありましたが、『幸せの国』ではそのような線引はありませんでした。
皆が誰しもをありのままに受け入れていたのです。それは人に対してのみならず、出来事など、全ての物事に対してそうでした。
困難なことがあった場合は、皆で協力してそれを改善するように動きます。そのような活動自体を皆が喜んでやっているのです。
どちらの世界に住むかはあなたが決める!
さて、あなたは『善悪の国』と『幸せの国』どちらで暮らしたいでしょうか?
この選択はたった今、あなたは自分自身で取ることができるのです。
そんな訳ないって?フフフ、そりゃあ、そう思うでしょうね。
でも、一つ面白いことを教えてあげましょう。
『幸せの国』というのは、『善悪の国』の後に創られたものですが、この『幸せの国』を創ったのは誰だかわかりますか?
ヒントは、、このお話の登場人物の一人です♪