「ハァ~、、、」と甘太郎は長いため息をついた。
順調に仕事も入っている。お客さんのお役にも立てている。
やるべきことは全部できているはずなのに、なぜかため息しか出ない、、、。
悩んだ後に甘太郎はソラディスの元を訪ねた。
甘太郎の話を一通り聞いた後、ソラディスは尋ねた。
「仕事は好きですか?」
「はい。人の役にもたってるし、充実していると思います。」
「では無償だったとしてもやりますか?」
「え?それはちょっと、、、」
「仕事が好きであれば、職場に行くのが楽しくて仕方がありませんか?」
「いえ、それもちょっと、、、、」
「ふふふ、そうでしょうね。」
ソラディスは微笑みながら言った。
そしてニヤリとしてこう付け加えた。
「ため息が出るのは当たり前ですね^^」
答えが得られるかもしれないと思い、甘太郎は前のめりになって尋ねた。
「なんでなんでしょう?仕事にはやりがいを感じているんですよね。人の役に立ってる感じもしますし。予約もちゃんと入っているし。でもなぜか仕事を全部やり遂げた後も、ため息しか出ないんですよね。」
「それはあなたが本当に望むことが何かに気付いてないからです」
ソラディスは続けた。
「痩せたい痩せたいって言う若い女の子達、いっぱいいますよね。そして言う割には全然努力しないで、痩せれないっていうケースすごく多くないですか?」
「ほとんどがそうでしょうね。」
「それはなぜだかわかりますか?」
”なんだこの質問は?もしかしてこれが自分の悩みに対するヒントになっているのだろうか?”
「言うわりに努力しないからじゃないですかね?」
「そうですね、ではなぜ努力しないんでしょうか?痩せたい痩せたいと言いながら友達と一緒にケーキを食べていたりしますよね。これはなぜですか?」
「痩せはしたいけれどもケーキも食べたい。誘惑の方が勝っちゃうんじゃないでしょうかね。」
「ふふふ、これはすごいヒントですね。甘太郎さんと一緒ですね。」
”え?!何が一緒なんだ?”
甘太郎にはソラディスのいう言葉の意味がわからなかった。
「自分が何をしたいか、自分が何を望むかを分かっていないんですね。」
「・・・・・」
「彼女達は本当は何を望んでいるのでしょうか?本当に痩せたいと思っているのでしょうか?」
「それは、痩せたいと思っているんじゃないでしょうか。」
「いえ、本当に痩せたかったら簡単に痩せているはずです。彼女たちが本当に望むことは痩せることではないんです。」
”え!いやいや、さすがに痩せたいでしょう!”
甘太郎は思わず心の中でツッコミを入れた。
「彼女たちが本当に痩せたかったとしたら、ケーキを食べることよりも痩せること優先すると思いませんか?」
「痩せたいのは痩せたくても、ケーキも食べたいんじゃないですか?」
「そう、まさにそのとおりでしょうね。」
ソラディスは微笑みながら甘太郎の方を見ている。さぁ気づいたかな?といった感じに。
”ソラディスさんが言ってるのは自分の悩みの答えのヒントなんだろうな。でもどういうことなんだろう?”
少し前を置いてソラディスは話し始めた。
「一つ言えるのは、彼女達はケーキを食べるのは好きなんですね。少なくても痩せることより。」
「言うわりには、実際それほどには痩せたくはない。ではなぜ言うのでしょう?彼女らは痩せたいと思ってるんですよね。でもそれはそう思っているだけで、本当は痩せることを欲しているわけではないんですよね。では彼らは本当は何を欲しているのでしょうか?」
ソラディスはしばらくの間、甘太郎に考える時間を与えた。
「う~ん、、、。」
甘太郎はしばらくの間考え、そして答えた。
「実はやはり痩せたいとか、そんな事しか思い浮かびません、、、」
「それだと心の表面部分しか見ていないことになります。ここから掘り下げてみましょう。」
”お、ついにヒントが得られるかもしれない!”
甘太郎はワクワクしてきた。
「彼女たちはなぜ痩せたいと思っているのでしょうか?この『なぜ』の部分、わかりますか?」
「それは太ってるよりも痩せてるほうがモテるからじゃないですかね?」
「正解。おそらくそうでしょう。だとしたら彼らの本当の望みは痩せることではなくモテることではないでしょうか?」
「確かに、、、」
「さて、では痩せたとしたら絶対にモテるでしょうか?実はそうでもないですよね。彼女達よりも痩せている人はたくさんいるでしょう。でもそれらの人々が全員モテるとは限らない。そのことを彼女たちは知っているでしょう。」
「”たとえ痩せたとしてもモテるとは限らない、、、”こんなことを潜在的に考えているのです。だとすると、本気で痩せようと行動はしないのではないでしょうか?」
「彼女たちが本当に望むもの、すなわち『モテること』に集中していたとしたらもっとストレスなく目的に近づくことができるでしょう。」
「ただ痩せようとするのではなく、好きな人の好みを知ろうとしたり、好きな人が喜ぶことをいかにしてあげようかとか考えるようになるでしょう。」
「なるほど、、、」
甘太郎は大きく頷いている。
「さて、甘太郎さん、あなたが本当に望むものは何でしょうか?」
「あなたが本当に望むことが何かに気づき、それを成し遂げたとしたら、ため息なんかではなくガッツポーズが出るようになりますよ♪」
”自分が本当に望むもの、、、、。仕事は気に入ってると思ったけどそれじゃないのかな?痩せたい女の子たちがヒントか、、、。ようし、じっくり考えてみるか!”
すっきりとした答えはまだ得られてはいないものの、甘太郎は希望の光が見えた気がして嬉しくなった。