「私、全然だめなんです。なんの取り柄もないし、すぐいっぱいいっぱいになっちゃうし、、、」
京香の言に対し、ソラディスは優しく尋ねた。
「それのどこがだめなの?」
「同年代の仲間は皆、結婚しているし、ちゃんとした仕事にも就いている、、、」
「自分は料理ができるわけでもないし、みんなが当たり前にできるようなことも、なかなか出来なかったりする、、、」
「それのどこがだめなの?」
微笑みながらソラディスは繰り返した。
「自分に自信が持てないんです。恋人とか欲しいとか思うけど、自分なんか好きになってもらえるわけないとか思っちゃって。緊張して話せなかったり、、、」
「京香、人の魅力はそんなところで決まらないよ。むしろ、出来ないところが魅力的なケースの方が多いんじゃないかな。
「そんなケースあります?普通は何だこいつ、そんなのも出来ないのか?って思われますよ、、、」
そんな京香の発言に対し、少し間をおいてからソラディスは答えた。
「いいかい?京香。それは違うんだ。出来るか出来ないかを見て相手は反応しているんじゃないんだ。」
京香は何を言っているのかまるで理解できず、首を傾げている。
そんな京香に対し、ソラディスは真面目な顔で話した。
「出来るか出来ないかなんか関係なく、京香を見ているんだよ。」
「私を?」
「そう、京香を見ているんだ。」
「どういうことですか?」
「京香は人を好きになったことがあるだろう?その時、相手が何かを出来なかったからと言って嫌いになるかな?」
「外国語があまり話せなかったり、人見知りしたり、それほど面白い話が出来るわけでもない、、。そんなので魅力が減ったりするかな?」
京香は首をひねりながら答えた。
「え?う~ん、、別に嫌いにならないかな、、」
ソラディスは続けた。
「逆に相手がいつも完璧だとしたらどうだろう?自分も完璧でいないとならないと感じて息苦しくなったりしないかな?いつも背伸びをして、素のままの自分でいられなくなったりしないかな?」
「あ、それはありますね。」
ソラディスは続けた。
「料理ができないからこそ可愛かったりもする。できないながらに一生懸命作ってくれたりしたら物凄く嬉しかったりしないかな?逆に凄い上手く作ってくれたとしても、愛情が感じられなかったらそれほど嬉しくなかったりするかもしれない。」
京香は考えながら口を開いた。
「そうか、、、出来るか出来ないかは問題じゃなくて、愛情が感じられるかどうかが大事ということですかね?」
ソラディスは黙って頷いている。
京香はうつむいてつぶやいた。
「では、私が人から好かれないのは、自分の愛情が足りないということでしょうか、、、、?」
ソラディスは直接答えずに、こう聞いた。
「京香は誰かを好きになるとしたら、どこに惹かれるのかな?」
京香は答えた。
「う~ん、一緒にいて幸せを感じる人?なんか傍に行きたくなっちゃう人。あれってなんでなんだろう?」
ソラディスはさらに続ける。
「なんでそばにいたくなるんだろうね?なんで幸せを感じるんだろう?」
「う~ん、なんでだろう、、、。なんか安心する。なんか落ち着く。なんか心地良い、、、」
「そういう人っていうのは、京香のことを丸ごと受け入れてくれるんじゃないかな?」
「あ、そうです!」
「京香。人はみな、自分のことを素のままに受け入れてくれる人を求めている。自分がそうしてあげることで、相手から好かれるんだよ。京香は誰に対しても、そのように対応してあげられているかな?」
ソラディスの言に、京香の表情は沈んでいった。
「私、そんな事全然考えていません、、。自分が嫌われないかとかばかり気にしていて、相手を全面的に受け入れてあげようなんて全然思っていなかった、、、。それどころか、逆に批評的な目で見ちゃっていた、、、」
ソラディスはフフフと笑いながら言った。
「京香は人に認めてもらえないと思い、それにより自信を喪失している。でも、それはすべて自分自身がそのようにしているだけなんだ。できるかできないか、、そんなのは全然関係ないんだよ^^」
京香は真面目な顔で答えた。
「たしかにそうかも知れません。わたし、何かを出来るようになれば認めてもらえると思って、これまでいろいろと頑張っていましたが、そのやり方では確かに幸せにはなれていません、、本当に重要なのはそんなのでは無いんですね。」
ソラディスは頷きながら答えた。
「相手のことを幸せにしてあげようという思いが、実は自分自身を幸せにするんだよ。なぜなら、相手と自分はひとつなのだから。」
「いや、最後はちょっと難しかったかな?ま、あまり気にしないでいいよ。アッハッハ」
ソラディスは嬉しそうにそう言うと、軽やかな足取りで去っていった。