やきもちって何?
ソラリスは悟の気持ちを知りたいと思い、いろいろな人に意見を聞いてみた。
「自分の好きな人が他の人と仲良くするのって嫌?」
ソラリスにとっては驚きだったが、面白いことに、全員が「そりゃそうでしょ!」といった答えだった。
ソラリスにはなぜ彼らがそのような感情を持つのかがわからず、その理由をますます知りたくなった。
彼らに嫌な理由を聞いてみたところ、以下のような回答を得られた。
- 自分が苦労してやっと手に入れた人をさらっと持っていかれると悔しい
- プライドが傷つく
- 付き合っているのに他の人といちゃつくなんてけしからん!
「なんでかとか説明できないけど、とりあえず嫌!」なんていうのもあった。
ソラリスには、なぜ皆がそんな感情を抱くのかは理解できなかった。
やきもちなんて焼かないよ
「逆になんでソラリスは好きな人が他の人と仲良くしても大丈夫なの?」
地球の友達からすると、逆にソラリスの気持ちがわからなかったのだ。
「僕はただ、好きな人には笑顔でいてもらいたいんだ。皆もそうじゃないの?
だから、その子が誰かと仲良くしているのを見たら、『あ、幸せそうに笑っている^^』と嬉しくなるね。自分もそこに加えてもらったりしたくなる。誰かと仲良くしているのを無理に引き離すとしたら、それが彼女を笑顔にするとは思えないんだよね。」
やきもちはどこから?
ソラリスには皆が当たり前だと言う『やきもち』をどうしても理解することができなかった。
「なぜだ?なぜそんな感情を持つんだろう?」
気になったソラリスはまた友達に訪ねた。
「自分の彼女が他の人と仲良くしているのを見るのは嫌なんでしょう?」
「あぁ、嫌だね。」
予想通りの答えが帰ってきたが、そこでソラリスは気になっていたことを確認すべく更に尋ねた。
「その彼女が満面の笑みで嬉しそうだったとしても?」
「嫌だね。」
ソラリスはうーむと唸った。まったく理解ができないのだ。
「自分の好きな人が物凄い喜んでいるのに、嫌ってどういうことなの?好きだったら、その子が喜ぶ顔を見たくなるんじゃないの?」
それに対する友達の答えはソラリスにとってまるで予期せぬものだった。
「幸せそうだから嫌なんじゃないか。自分以外の人と仲良くするのなんか、見たくないに決まっているじゃないか。」
これはソラリスにとって衝撃的な答えだった。そして、自分と地球人との相違点が少しわかってきた気がした。
「そうか、、好きな人を自分で独り占めしたいのか、、、。これが『所有』か、、、。でも、なんで所有できないと嫌なんだろう?」
だから苦しむのか!
”『所有』の概念がわからない限り、自分は友達や悟の気持ちに気づけないかもしれない、、、”そう思ったソラリスは更に尋ねた。
「ごめん、何度も聞いて。でも、どうしても僕にはわからないんだ。付き合っている人が自分以外の人と仲良くするのを見たくもないというのはなんで?なぜ、自分だけとしか仲良くしてはいけないと思うんだい?」
友達はなんでそんなこともわからないんだ、、、という表情をしながらも、ソラリスの問に真面目に答えてくれた。
「う~ん、、彼女を作るってのは簡単ではないんだ。やっとの思いで自分のものにできたのに、サラリと他の人に持っていかれるなんて言うのは凄く癪だよな。」
”自分の『モノ』?!好きな人をモノ扱いなの?”
ソラリスは聞いていて物凄い違和感を感じたが、口には出さなかった。
友達は説明を続けた。
「あと、、自分の好きな人が他の人と仲良くなってしまうと、自分のもとに帰ってきてくれないかもしれないと思ったりする。それは凄く怖いし、寂しいし、プライドも傷つく、、、。」
友達はゆっくりと話しながら、自分の気持に向き合っているようだ。そしてボソリと言った。
「自分に自信がないっていうのもあるんだろうな、、、。」
”なるほど、相手のことを好きとか幸せにしてあげたいという気持ちよりも、自分が傷つきたくないという気持ちのほうが強いということなのかな、、、”
ソラリスは心の中でそう思いながら更に尋ねた。
「ありがとう。なんか少し掴めてきた気がする。でも、自分以外の人と仲良くするのが癪だとか、自分のもとに帰ってこないかもしれないというのが怖いとか言っていたけど、それはなぜ?そこがちょっとわからない。」
無邪気に聞いてくるソラリスに”お前は幸せなやつだな、、、”というような表情で友達は答えた。
「好きな人を自分の彼女にするために物凄い頑張ったとするだろう?それでやっと手に入れたのに、ほとんど苦労もしてない人がサラリと奪ったらずるいと思うじゃない。自分が報われてしかるべきでしょう?」
「『自分が報われてしかるべき』?!、、、そうか、、、、足りていないのか、、、。だからだったのか、、、、」
ソラリスはやっと地球人の気持ちが理解できた気がした。
ヘーブ星では『すべては完璧である』ということが常識であり、大変なことがあったとしても、心は満ち足りているのが当たり前だった。でも、地球の人は幸せや安心感に満ち足りているわけではないことに気づいたのだ。
”満ち足りていないから、自分が損したり、奪われるように感じるんだ、、。相手のことを考える余裕がなくなるんだ、、、。そうか!やっとわかったぞ!”
「へ?足りてない?なんの事?」
『すべては完璧である』ことは説明してもなかなか理解されそうもないと判断したソラリスは、それについて口にはせず、短く答えた。
「いや、なんでもない。すごく参考になった。ありがとう!!」
自由恋愛はタブー?!
”幸せに満ち足りているわけではないとしたら、いろいろ不安になったり、所有したくなるというのも理解できる。でも、、、自由に恋愛もできないというのはやはり地球人も辛くなったりしないのだろうか?”
そう思ったソラリスは周りの人々にいろいろと聞いてみた。すると面白いことが浮かび上がってきた。
ソラディスが言っていたとおり、身体(特に大人)に関する制約がたくさんあるようだった。同じ地球でも地域差はあるようだ。ソラリスが住んでいる地域で見つかった制約はこんなものだった。
- 大人になったら恋人以外の異性の身体に興味を示したり、触れたりするのはタブー
- 付き合っている以上、自分以外の人と親密になってはいけない、したとしたら悪行
- そもそも性行為などはふしだら。裸で出歩くのも犯罪だったりする!!
- 人から見えるところなどでおしっこやうんちをしてはいけない
”トイレも自由にしてはいけないなんて、、、どういうことなんだろう?”
”好きになったら体に触れたくなるのは当然だと思うけど、それが悪行と思われているの?!”
”裸になるだけで怒られるなんて、、、、”
これらの制約にソラリスはすごく不自然さを感じたが、実は地球人もそれらを喜びを持って受け入れているとは限らないことがわかったのだ。
ソラリスが地球人から聞いた話では、彼らはこんな感情を持っているようだった。
- その人だけとしか仲良くしてはいけないなんて言う縛りは嫌なので、付き合うとか結婚とかは嫌だ
- 実は恋人以外に好きな人がいるけど、こんなことは他人には話せない
- 男友達と仲良く話しているだけなのに恋人から「仲良くするな!」とか言われるのは嬉しくない。もっと自由に遊びに行きたい
- 自分の恋人が他の人と仲良くなっちゃったりしないかが気になり、いつも心配で辛い、、
- しがらみとか面倒だから、性的な行為はプロのところにしに行く
そうか、、、地球人も実は自由になりたかったりしているのか、、。
相手を自由にすれば自分も周りも自由になる
自由に恋愛したいと思う地球人もわりといることに気づいたソラリスは、自由恋愛の良さを自分なりに人々に伝えることにした。
- 『常識』と呼ばれるものを盲信するのではなく、自分の感情にも耳を傾けよう!自由に人を好きになることは本当に悪いことなのか?
- 好きな人を所有するのではなく、相手を自由にしてあげよう!
- 相手を自由にしてあげれるようになって初めて自分も自由になれる
”自分の恋人は自分のものだけにしようと頑張っていても、逆にその恋人に嫌がられたり、気疲れしたりする人は多いようだ。
そのような人たちが「恋人は自由にしてあげよう」と思えたとしたらかなりすっきりとするだろう。”
そんな事を考えながら、恋に悩む数人の地球人に自由恋愛の良さを伝えてみた。
すると、、思いの外、彼らが理解を示してくれたのだ!
最初は「ヤキモチ焼かないなんて無理!」というような人でも、最終的には「確かに、お互いが自由な方が結局は楽だし、良い気がする。相手を自分の『モノ』みたいに考えるのは確かにあまり良くない気がしてきた、、、」という風に変わっていったのだ。
そして更に!
ソラリスの教えを聞いた数人は、自分の友だちなどにも自由恋愛の良さを伝え始めたのだ!
”『すべては完璧である』ということを知らない地球人にも、自由恋愛の良さを知ってもらうことは出来る!”
ソラリスはすごく嬉しくなった。
”理解者が増え、実践する人が増えれば、今度はこれが地球でも『常識』になるかもしれない。悟もわかってくれるといいなぁ。”