80歳~100歳越えのメンバーからなる元気会の皆さんを講師としてお招きして開催した『古老による藁での手仕事+昔語り』、大盛況でした。
実際の生活の中、自分たちで藁で草履を作っていた世代の人々からのお言葉は含蓄がありますね。
ただ、草履を作るにはまず、藁で綺麗にしっかりとした縄を製作する必要があります。
とりあえず縄の体裁を整えるだけであれば割と簡単にできますが、ちゃんと『しっかり』制作する必要があるのです。
先生方も「もっと『しっかり』した紐を作らにゃあ」ということを繰り返しおっしゃっておられましたが、草履を作ったことがない人にとって、この『しっかり』の意味を感じ取るのは難しいと思います。
参加者の中には「どうしても草履作りまで進みたい!」という強い思いを持つ方がいる一方で、先生の中には「しっかりした縄ができないうちは草履作りを教えるわけにはいかん」との思いを持つ人も。
面白いですねぇ。双方、熱い気持ちを思っていますね。
せっかくなので、そのお互いの気持ちが通じ合えたら良いなと思い、昼ご飯後に、お互いの気持ちを伝えたり、少しお話をする時間を設けました。
結果、どうしても草履作りに進みたい人は、自分で制作したわら紐を古老にチェックしてもらい、これなら良いというお墨付きを頂けた人だけ草履作りに進むことに。
草履作りのハイライトは、編み終わった後に建て紐を引き絞ってかかとの形を丸く整えるところだと思いますが、その際に、縦紐が『しっかり』できていないと、引き絞ることができないのです。
最後の最後に、草履ができないということが判明する、というシーンが現れるのです。
古老はそれを知っていたため、縄づくりが安定してからでないと草履なんか作っても上手くいかないから、時期尚早だと思ったのでしょう。
実は私は藁で草履を製作した経験があるため、自分も最後の最後に建て紐が引けなくなる人が出るとは予想していました。
しかしむしろ、それだからこそ、みんなにトライしてもらいたいと思いました。
その方が『しっかり』の意味が沁みると思ったのです。
実際、自分が最初に草履を作った際には、わざと縦紐は荒く作り、それだとどうなるのかを実験したところ、やはり最後の最後に上手く引けず、力任せに引っ張ったところ、紐がちぎれて終わりました。
それが自分としては実験成功なのです。その粗さだとやはりNGかという、NGの線を早めに知ることができたからです。それを知るための実験だったので草履を編むのもラフに時間をかけずに行ったため、ダメージも別にありません。
ただ、次作るときは『しっかり』作る必要があるなということを心に刻むことができたのです。
さて、今回のイベントで初めて藁草履を作った参加者の方もその洗礼を浴びることになりました。
わりと締りの良い強度も十分なわら紐を作った方なのですが、最後に建て紐を引くことができませんでした。その方の力が弱い場合もあるので自分が引っ張ってみたら、紐がちぎれました…
よく見ると、引っ張るところよりも編まれているところの方が随分と径が太くなっていました。それだと摩擦が強くなりすぎるので、引くことが極めて難しくなります。
『しっかり』には太さの均一さも含まれていたのです。
その学びに気付くことができたため、その人も「なるほど。太さにも気を付けるべきだったのがわかったので、次はできそうです!」と希望に満ち溢れていました。
素晴らしいですね。
「せっかくやったのに、最後に壊れちゃったよ。意味なかったじゃん…」
などと思うのとは大きな違いがありますね。
今回のイベントの開催には、ビヨンドと古老たちを是非繋げたいと動いてくれた山梨ウェルネスツーリズムの会長と、実際に協力してくれた元気会の会長並びに会員の方々のご協力があります。
ご協力いただいた方々、本当にありがとうございました。
参加してくれた皆さんも、楽しんでくれたようでうれしかったです。