「優吾、どうしたんだい?」
優吾が机でため息をついていたのを見て、幸枝(優吾の祖母)は尋ねた。
「母さんが勉強しろしろウルサイんだよ、、」
うんざりした感じで優吾は答えた。
以前、優吾は喜んで勉強をする子だった。
それが最近は勉強をするのが嫌いになったようだった。
幸枝は聞いてみた。
「前は自分から勉強していたから、勉強は嫌いじゃないのかと思っていたよ。何かあったのかい?」
優吾はただ「別に、、、」と答えるだけだった。
その後に幸枝は澄子(優吾の母)と圭太(優吾の父)との会話から、優吾はとなりの昭一君といつも比べられていることがわかった。
「隣の昭一君はあんなにできるのにね、、、なんでうちの優吾は、、、」
こんな会話は優吾の耳にも入っていたようだ。
「あぁ、、こりゃあ優吾もやる気無くすわな、、」
このままでは優吾が可愛そうだと思った幸枝は、優吾に声を掛けた。
幸枝 「優吾、ママが何で勉強しろしろ言うか分かるかい?」
優吾 「あぁ、わかるよ。」
幸枝 「でもやはり、やれ、やれ!言われたら嫌だよねぇ。」
優吾 「うん。」
幸枝 「私もそうだったからよく分かるよ。やれ、やれ!言われたら遊びでもやりたくなくなっちゃうよ、、、」
優吾 「バァちゃんもやれ、やれ!言われたの?」
幸枝 「あぁ、そうだよ。最初は好きでやっていたんだ。算数なんてすごく好きでね、、、。まさに『遊び』だったんだよ。私にとっちゃ。」
優吾 「でも、やれ!と言われたら『遊び』じゃ無くなっちゃったんだね?!」
幸枝 「その通りさ。だから優吾の気持ちはよく分かる。しかし、、、」
優吾 「しかし?」
幸枝 「そう腐ってばかりいても、優吾にとって面白くはないんじゃないかと思ってね。
私しゃ学がないもんでね。学がある子は羨ましく思ったもんさ。お前のかぁさんもそうなんだろうね。」
優吾 「・・・」
幸枝 「やるかやらないか、、、それはお前が決めることさ。やりたくなければやらなくても良いと私は思う。でも、やりたい理由がアホくさい理由だとしたら、それはもったいないかなとも思うんだよ。」
「私しゃねぇ、やれやれ言われて腐ってね、、結局、勉強はしなくなっちまったのさ。後から『勉強しとけば良かったな、、』なんて幾度と無く思ったけど、後の祭りさ。」
「ま、そんなこともあって、優吾には後悔してほしくないと思ってね。でも、もうひとつ言えるのは、『勉強しなくても何とかなる』ってことさ。私には学はないが、爺さんもいる。お前のような可愛い孫もいる。勉強で一番なんかになる必要はない、誰かと比べる必要なんかもない。私の中では優吾はいつも可愛い孫なんだよ。」
「だから優吾、好きな事をおやりなさい。私はいつでも応援してやるからね。」
優吾 「ばぁちゃん、、、」
澄子は優吾がまた急に勉強を始めたのを見て不思議に思った。
「あら、あの子また急にやる気を出してどうしたのかしら?」