好きになるのってなんで悪いの?

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ソラリスの初恋

父さん、今日は優香と友だちになったよ。すごい笑顔が可愛い、明るい子だよ。

ソラリスは父のソラディスに嬉しそうに話した。

それから数日後、ソラリスはまた楽しそうにソラディスに報告した。

「今日も優香に会えたよ。すっごく嬉しかったなぁ。」

その後もソラリスの口からは優香の事が沢山出てくるようになった。

「あ、この花きれいだな。優香に見せてあげたいな。」
「あ、、今、優香は何しているかなぁ?」

ソラディスはそんなソラリスを可愛らしく思い、自分の子供の頃などに重ねていた。

「ソラリスは優香のことが好きなんだね。」

「うん、大好き!なんだかね、いつも優香のことを考えちゃうんだ。あの子の笑顔とかを思い浮かべるとすごく幸せになるんだ!なんだろう?こんなにいつも優香のことばかり考えちゃう、、、。変かな?」

「全然変じゃないよ。それは『恋』だね。特別な愛のカタチだ。いつでも味わえるものではないから、大切にしたほうがいいよ。」

「これが恋か、、、。恋っていいね!楽しいことがあると共有したくなる。その子のことを幸せにしたくていろいろしたくなっちゃう。それに、優香も自分のことを好きでいてくれるんだよ!そんなこと言ってもらえるなんて本当に嬉しくなっちゃう!!」

ソラディスはソラリスが恋を経験し、それを楽しんでいるのを見て微笑ましく感じていた。

好きになるのって駄目なの?

それから数日経ったある日、ソラリスは元気なさそうに帰ってきた。
帰宅すると瞑想部屋に入り、何時間も出てこなかった。

瞑想部屋から出てきたソラリスはやはり元気がない。
「ソラリス、どうした?何かあったのか?」

そう聞いたソラディスに対し、ソラリスは口を開いた。

「人を好きになるのって駄目なの?」

「そんなわけないだろう?どうしたんだ?」

「優香には『付き合っている』という人がいるらしくて、その人が悲しむから自分と会うのは良くないんじゃないかと言い出したんだ、、」

「連絡取るのも控えようと言ってきた、、、。」

「お父さん、なんでなの?なんで好きな人に会うことが良くないことなの?!しかも、、、優香はああ言っているけど、心では『私も会いたい』って思ってくれているんだよ?なんで思ってもいないことを言うの?地球ではそれが普通なの?」

苦しんでいるソラリスを見てソラディスの胸は傷んだ。

「地球ではね、、、『所有』という概念があるんだよ。」

「所有?」

「そう、あるものを自分のものと宣言し、他の人達には触れさせたり、自由にはさせないようにするんだ。」

「なんでそんなことをするの?」

「失うのが怖いんだよ。」

「え????失う?」
地球の考えにはまだ馴染みの薄いソラリスには意味がよくわからなかった。
「どういうこと?」

「ソラリスと同じように、優香のことを好きになった人がいて、優香もその人のことが好きだったんだろう。そしてその二人は特別な関係になることを約束したんだろう。それを「付き合う」と言って、他の人を好きになったりせずに相手のことだけを見ますという約束みたいなことをするんだ。」

「なんで?」

「これは理解が難しいかもしれないね、、、、。今、ソラリスは優香に会えなくて寂しいだろう?」

「うん、むちゃくちゃ寂しいよ、、、」

「そんな思いはしたくないだろう?」

「もちろん!」

「優香の付き合っている相手もそう思っているんだよ。寂しい思いはしたくないとね。」

「う~ん、、それはわかるけど、その人は優香に会えるよね?」

「もし優香ちゃんに他に好きな人ができてしまったら、優香ちゃんはその人の方に行ってしまい、自分とは会えなくなるかもと心配なんだ。」

「えええ??そんなことを好きで一緒にいるときから考えているの?」

「この考え方はヘーブ星の私達にとって非常に不思議な考え方で、すごく興味深い。」

「他に好きな人ができたらどうなるの?」

「ここがすごく興味深いところで、他に好きな人を作ってはいけないというのが大前提みたいだ。」

「えええ???!!!好きになるかどうかなんて決めたりできないものでしょう?地球人は自分でコントロールできるの?」

「結構コントロールしているみたいだね。でも、思いが強い場合にはやはりコントロールしきれなくなる。優香ちゃんもソラリスのことを好きになってくれたんだろう?」

「好きになってくれてはいるけど、好きになっちゃ駄目なんじゃないかと考えたりしている、、、。すごく変だよ、、、、。」

心は制御できないから身体を制御?

「うん、でも地球人も心は制御できないことはわかっているみたいだ。そこでここが面白いところなんだが、彼らは心は制御できなくても体やものなどの目に見えるものは制御できると考えているようだ。」

「例えば?」

「優香ちゃんに他に好きな人を作るなと願っても、それは制御できない。しかし、優香ちゃんの体に他の人が触れてはいけないとか、優香ちゃんに会ってはいけないという風になら制御できると思っているんだ。優香という『体』は所有できると思っているんだよ。」

「そうか!それでか!」

「なにか思い当たるフシはあるかい?」

「僕は優香が好きだったから、『好き!』と言って彼女に抱きついたんだ。その時、優香は他の人の目を気にしたり、ちょっと戸惑った感じだった、、、、。その後から彼女の態度はちょっとおかしくなった、、、」

「優香は地球人特有の『所有』のルールに反したと思って罪悪感を感じたんだろうね。付き合っている人がいる場合、その人以外に体を触れさせるのは良くないこととされているんだ。」

「え??優香の体に触っている人なんかたくさんいるよ?」

「それは同性の子とか、小さい子や老人とかではないかな?」

「うん、そうだよ。」

「それは地球ではOKとされているみたいだ。あと、医者のような場合もね。」

「基準がわからないな、、、。なんで僕は駄目なの?」

「基準は、、、その人が『付き合っている人を奪う可能性があるかどうか』ということだと思うな。」

「奪うって、、、その人の事を付き合っている人が好きになってしまうといういことだね。」

「そう。ソラリスの事を優香ちゃんは好きなんだろう?そんな人に対して触れたり触れられたりするというのは、『付き合い』の約束からするとまずいことと思われたんじゃないかな。」

「う~ん、、、、僕も優香も、何も悪いことしていると思わないんだけどな、、、、。」

「お父さんもそう思うよ。むしろ、ソラリスが恋を経験できたことをすごく嬉しく思っている。」

あふれる想い

ソラリスが優香と連絡も取らなくなって一週間ほど経ったある日、ソラリスはソラディスに思いをぶつけた。

「僕、優香に会いたい!優香に会いたいよ!!」

ソラリスのあふれる感情にソラディスは胸が熱くなった。

「ソラリス、、、地球では体はNGでも、心はセーフなんだよ。会えないとしても、優香ちゃんの心に直接語りかけてあげたらどうかな?」

「え?それってどうやるの?」

「優香ちゃんのことを想いながら、伝えたいことを強く考えるんだ。ソラリスが優香ちゃんと繋がりを築けているのであれば、必ず通じるよ。」

「うん、やってみる!」

そう言ってソラリスは目をつぶった。

「優香、会いたい、会いたいよ!優香、大好き!本当に好き!!なんで会えないの?優香に会いたい。地球では駄目なことなのかもしれないけど、やっぱり触れたい。抱きしめたいよ、、、、。」

ソラリスの想いは凄まじく、そばにいたソラディスには直接感じる事ができた。そして息子の激しい思いに触れ、涙がこみ上げてきた。

ソラリスはまだ熱心に優香に思いを伝えているようだ。
そして熱心に足で床になにか文字を書いているような仕草をしていた。

「ソラリス、それはなにをやっているんだい?」

「これ、僕と優香の二人で遊んでいたやつなんだ。足でお話するの。僕と優香だけがわかるんだよ^^ この想い、ちゃんと優香に届いているかなぁ?」

「大丈夫。必ず届いているよ。」

自由な愛のカタチ

「父さん、どうしたら僕は優香と会えるようになるかなぁ?」

「優香の付き合っている人に、優香とソラリスが会うことが彼にとって脅威ではないことを知ってもらえばいいんじゃないかな。」

「優香が付き合っているのは悟君というんだけど、悟も僕の大好きな友達なんだ。優香が言うには、悟は優香と僕が仲良い事を知り、ショックを受けているみたいなんだ、、、。自分としてはなんでショックを受けているのか理解できなかったけど、僕に優香を奪われると思ったんだね、、、。
奪うとかそんなのじゃないんだけどな、、。ただ優香のことが好きで、ただ会いたいだけ。それが嫌なのかな、、、、」

「もしソラリスが悟くんの立場だとしても嫌だとは思わないだろう?」

「うん」

「地球では、ソラリスと同じように感じる人はかなり少数なんじゃないかな。普通は自分の好きな人が他の人を好きになったりしたら嫌がる。これを『ヤキモチ』と呼んでいる。」

「皆が皆を好き。これが最高だと自分は思うなぁ。独り占めとか、他の人を好きになるなとか、、、どうしても楽しいとは思えない。」

「でも地球ではそれが大多数の感情なんだ。なんでかわかるかな?」

「う~ん、、、、わからないな、、、。」

「ソラリスは愛が無限であることを知っているだろう?何人でも愛せるし、愛すれば愛するほど、むしろ愛情は増える。他の人を好きになったからといって、愛情が減るものではないことを知っているだろう?」

「知っているよ。」

「地球人はそう考えてはいないんだ。トラブルを避けるために頭で考える習慣が続いたことで、感覚が薄くなっている。そして心を見ることをしなくなり、目に見えるものばかりを信じるようになったみたいだ。」

「彼らは人間を心として見るのではなく、身体として見る傾向がある。有限な身体としてね。身体は有限だから、何人もの人と会うことはできない、何人もの人と親密になんかなれるはずがないと思ってしまうんだよ。」

「身体として見ているか、、、、だから抱きついたりするのは駄目なのかな、、、。一つしかない身体を奪う行為だと見られたのか、、、。なるほど、、、。やっと少し理解できたよ。ありがとう、父さん!」

「僕、優香も好きだけど、悟も大好き!だから皆が楽しく笑えるようになりたいな。悟と今度話しをしてみるよ。わかってもらえたらすごく嬉しい。優香も絶対に喜んでくれる!」

「ソラリス、皆が楽しくなれるといいね。大丈夫、絶対になれるよ。悟くんと話す前に、地球の人の考え方をもうちょっと学んでみたらどうかな?なぜ彼らが自由恋愛には積極的になれないのか、、、彼らの気持ちへの理解が深まれば、悟くんとも話が通じやすくなるだろう。」

「うん、将吾とか他の子にも聞いてみるよ!」
ソラリスはやるべきことが見えてきてワクワクしているようだ。

自分で道を切り開こうと必死に考えているソラリスを見ながら、ソラディスは息子の成長を感じて頼もしかった。
「フフフ、恋か、、、。ソラリスももうそんな年か。」

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