人生、やんなっちゃうな!
「あ~もう、本当に俺って駄目だな!生きているのがマジで嫌になるな!」
酒場で悟は同僚に愚痴を吐いていた。悟は長い付き合いだった親友とルームシェアをしていたが喧嘩してしまい、親友は部屋を出て音信不通になっていた。それ以外にも辛いことが重なりイライラとした生活を送っていたが、ついに職場でそのイライラは爆発し、上司に暴言を吐いて謹慎中の身となっていた。
「人生ってままなりませんねぇ」
悟は同意を求めるように隣に振り向き、一人で飲んでいた髭の男性に声をかけた。
人生はゲーム
隣の二人のやり取りは耳に入っていたため、髭の男は大体の内容は把握していた。
髭の男は軽く微笑みながら口を開いた。
「ふむ、、、。参考になるかわかりませんが、一つお話をしましょう。
酔っぱらいが独り言を言ってるな、、、くらいに思って聞いてください。」
「あなたが不満を言っているこの『現実』と呼んでいるもの、あなたの人生、、これらはすべてただのゲームです。」
悟は何を言っているんだ、このおじさんは?と怪訝な顔で聞いている。
「だから大いに楽しみましょう。」
そういって髭の男はニッコリと笑った。
「は?楽しみましょうだと?俺たちの話を聞いていたくせによくそんなことが言えるな。」
悟はイライラしてきた。
「人生はゲームなんです。しかも、あなた自身が創っている。もしこれが分かれば不平や不満なんてものは君たちの口からは出なくなりますよ。」
”不平不満がなくなるって?人生は自分自身で作っている?”
不平不満ばかりの人生を送ってきた悟は興味をそそられた。また、髭の男が自分をからかっているようにも見えない。悟は取り敢えず少し話を聞いてみることにした。
「人生は自分自身で作っているということですか?」
「そうです。であれば不平不満なんか出るわけないでしょう?」
「自分が人生を作っている?全然、実感が湧きません。そして聞いていたからわかると思いますが、不平不満ばっかりです、、、」
髭の男はうんうんと頷きながら答えた。
「ゲームの中であなたは自分をゲームの主人公だと思い込んでいます。
しかし、あなたは実はプレーヤーなのです。主人公が死んだとしてもプレーヤーであるあなたは傷つきもしませんし、終わりにもなりません。」
”???なんだかサラリと凄いこと言ったぞ。さっぱり意味は分からないけど、なんか人生が好転するヒントをくれているような気がするぞ、、、”
悟は少し斜め上をぼんやりと見ながらなにやら必死に考えていた。
なぜゲームをしているのか?
「あなたが現実と呼ぶ世界にもゲームというものがありますね?多くの人たちがプレーしているのではないですか?映画やドラマも同じですね。なぜ、多くの人たちが見るのでしょう?
なぜ、映画の中にわざわざ悪役などを配置したりするのでしょう?楽しい内容だけではなく、苦しや悲しみを描くシーンもあるでしょう。
なぜ、あなたがたはそれらの映画を見たいと思ったりするのでしょう?
実はあなた自身がゲームをしたいと思っています。
そして自分自身でゲームを創っているのです。
面白いのは、そのことに気付いていないということですね。ここがヒネリが効いていて一番面白いですね。
そう言うと髭の男は微笑みながら目の前にある酒を一口飲んだ。
悟は黙って聞いている。
悪
「ゲームの中では悪という概念が存在しています。しかしそれはただの概念。実際には悪なんてものは存在しません。ゲームの中でのただの設定です。善と悪、対比させたほうがゲームとしては盛り上がるでしょう?」
敵
「あなたが「敵」と呼ぶ役がいるから楽しかったりするのです。最初からレベル100で、敵も出てこず、ハラハラする冒険も行わないという設定のロールプレイングゲームとかあったとしても、誰もプレイしないでしょう?
敵と呼ばれるキャラは、ただ役としてやっているだけ、本当は敵なんかではありません。
憎まれ役を演じてくれているありがたい存在です。」
ただのゲームなんて思えない
「確かにゲームだったら敵がいたほうが面白いし、ハラハラするような冒険もあったほうが良いですね。」
「そうでしょう?殆どの人はそう思うでしょう。だからそんな設定で自分の人生も創っているんですよね。」
「う~ん、、、自分がゲームを作るとしたらそういう設定にすると思いますが、自分の人生が本当に自分自身で作れたとしたら、あまり辛いシーンは入れたくないと思いますけどね。自分の人生は嫌なことが凄く沢山出てきます。こんな人生を自ら作るとはとても思えませんね。これがゲームだとしても全っ然、面白くない!」
悟は最後に少し語気を強めた。
「ふふふ、それは目の前の出来事があまりにリアルなために、ゲームということがわかってないからですね。映画を見るでしょう?そこで凄い危険なシーンがあったりするとハラハラしませんか?あれと同じですね。実際はあなたはスクリーンを見ているだけで危険はないでしょう?それでもハラハラドキドキする、、、。」
「う~ん、、、でもやっぱり、人生がゲームなんてとても信じられません、、」
「あはは、だから面白いんじゃないですか!ネタがバレバレのゲームなんて誰もやりたくないでしょう?」
髭の男はそういうとにっこりと笑った。
ヒントは夢
「人生はゲームである」これに気づくのは難しいでしょう。あまりにもリアルなゲームですからね。
しかし、でも実は気付けるためのヒントが与えられているのです。
それは『夢』です。
皆さん寝ますよね。夢を見たことありますよね?
おかしいと思ったことはありませんか?なぜ、人は眠るのか?
夢の中で辛い目にあったこともあるでしょう。
夢の中で死んだことがあるかもしれませんね。でも、実際は死んでいない。
夢の中で物凄くあせったとしても、夢から覚めたら安堵するでしょう。
どうですか?すごくゲームと似ていると思いませんか?
夢が与えてくれる一番大きなヒントはこれです。
『あなたは夢の中でその夢を現実だと思い込んでいる』
夢から覚めない限り、それが夢だとはわからない。
人生というゲームを楽しめず、辛くて嫌だと感じることが多いのは、まさにこれと同じなのです。
人生がゲームということに気付けないからなのです。」
「むむぅ、、、」
悟は首をひねり、俯きながら唸っている。
人生がゲームだと気づけたら?
「人生は自分が創っているなんてなかなか信じられないでしょう。しかし、もしそれに気付くことができたら目の前の出来事に対する見方はガラリと変わります。
そして何のために自分はプレーしているのか?と自問するようになるでしょう。
そして深く探求していくと、自ずと自分がゲーム内でどのような役割を持っているかが見えてくるでしょう。
大事なのはゲームを終えた際に幸せになることで、ゲームの中をどうこうしようとやっきになる必要はありません。
その辺がぼんやりとでも理解できたとしたら、あなたの人生ゲームは非常に愛情にあふれたものとなるでしょう。」
「ふふふ、まぁあまり固く考えず、酔っぱらいが変な事言っていたなくらいに思ってくれたら良いかなと思います。」
そう言い残し、髭の男は店を出ていった。
「人生は自分が作っているって?でも、あいつ(親友)はもう出て行っちゃったんだ。連絡ももう取れないんだ。取り返しがつかないじゃないか、、、、。そんなゲームあるかよ!」
この時はまだ悟の心は晴れなかったが、この髭の男との出会いが悟の後の人生を大きく変えていくことになるのだった。
参照『扉の開き方』