その白い存在はただこちらをみて微笑んでいる。
なんとなく暖かい感じがする。大丈夫だよ、大丈夫だよと言ってくれているような気がする。
暫くの間をおいて静江は聞いた。
「子供は私の心を反映しているっていうのはどういうことですか?あれからすごく考えたんですけど、全然わからないんです、、、」
白い存在はただ微笑んでいる。
静江は再度繰り返し聞いたが、白い存在はただ微笑むだけ。
「なんで答えてくれないですか?自分で考えろということですか?私なりにはすごく考えたと思っているのですが、、、」
白い存在はやはりただ微笑んでいる。
全然答えてくれない存在にやや苛つきながら言った。
「私は一生懸命やっているのに、全然大地は私の言うことを聞いてくれないんです!」
すると白い存在は口を開いた。
「あなたは、、、、大地君の言うことを聞いてあげていますか?」
「え?、、、、」
静江は答えに詰まった。
頭のなかをグルグルと色々な考えが回っている。
”私は大地の言うことをちゃんと聞いてあげていたのかって?”
”そりゃ、ちゃんと聞いてあげているわよ。おやつも好きなの買ってあげたし、好きなテレビ番組も観させてあげているし、、、”
白い存在はまた口を開いた。
「あなたは、、、、大地君が何を望んでいるかわかっていますか?」
「え?、、、、、え?、、、」
静江はまた答えに詰まった。
白い存在は続けた。
「大地君が本当に望んでいるのはおやつでもないし、すきなテレビ番組を観ることでもありません。」
静江はドキッとした。
”え?!私が心のなかで思っていることがこの人にはわかっているの?”
「大地君が本当に望んでいるのは、、、、、、、あなたです。あなたにかまって欲しいのです。ちゃんと目を見て返事をして欲しいのです。自分が楽しくやっている遊びを一緒にやって欲しいんです。そして一緒に笑いたいんです。それだけなんです。」
静江はしばらく考え込んだ。
”私だってちゃんとかまってあげているわよ?一緒に遊んであげてもいるし、、、”
そして聞いた。
「では、心の反映であるというのはどういうことですか?」
「たしかにあなたは大地君に返事はしている。しかし、あなたが返事をするまでに大地君は何度「ママ~、ねぇ、マーマー!」と言ったかわかりますか?」
「!」
静江はアッと思った。
毎朝、夫の弁当を作るのに忙しく、足元にまとわりつく大地をちょっとうっとうしいなと思ってしまっていたのだ。
”確かに目も見ず、ただ「はい、はい」なんて空返事をしていたな、、、”
白い存在は続けた。
「大地君が大声を出して呼ぶのをうっとうしいと思うかもしれませんが、”大声を出さないと聞いてもらえない、振り向いてもらえない、、大好きなママに、、、”、そう感じている大地君の気持ちを考えたことがありますか?」
静江は何も言えなかった。思い当たるフシがいっぱいあった。
そして大地に悪いことしたな、確かに大声出させていたのは私のせいだったかも、、、と思った。
そして聞いてみた。
「子供は心の反映であるというのは、私が愛情を持って応えれば、相手も愛情を持って応えてくれるということでしょうか?」
白い存在は何も言わず、ただ微笑むだけだった。