大学院を卒業する際に卒業旅行としてインドに一ヶ月一人旅をしたことがある。
これはその時のお話。
耳かき詐欺に注意?!
『地球の歩き方』というガイドブックに、ある公園において『耳かき詐欺』の被害が多発しているので気をつけろと記載されていた。
たまたま自分はその公園に来ていたので、その記事に興味をもった。
『耳かき詐欺』?なんだそりゃ?被害多発だけでは、なんのこっちゃわからないな。
どんな詐欺なんだ?
試してみたい!
自分の中で、自分自身で試してみたい!という衝動が沸き起こった。
自分が当事者になった場合にはどうなるんだろう?
なんてことを思いながらゆったりしていると、、、
来た~!
白い服でヒゲの老人?おじさん?が現れた。
そう、この人がまさにその耳かき詐欺の本人なのだ^^
さぁ、どう来る?
最初は無難な話から。
インド旅行はどうですか?楽しいですか?とかそんな感じ。
そしてさり気なく、「私、耳かきが上手いです。凄い評判良いね。」
みたいな展開に。
「あ~、そうですか^^」
くらいに軽く流していると、「お兄さん、耳かきしませんか?高くないよ。」と。
面白くなってきた自分は、少しずつ確認を始めた。
ヤス 「へ~、幾らですか?」
耳掻き師 「20ルピー」
(確かこれくらいだったと思う。当時、1ルピー=3円くらいだったと思う)
ヤス 「片耳ですか?両耳の料金ですか?」
耳掻き師 「両耳の料金です。」
確認のために更に聞いてみた。
ヤス 「ちなみに、オプションとかは何も無しでいいですから。両耳やって頂いて、絶対に20ルピーのみの支払いというのであればやってみようかなと思います。」
耳掻き師 「はい」
そして念の為に再度確認。
ヤス 「何があっても20ルピーしか払いません。それで良いですね?」
耳掻き師 「はい、それでいいです。」
こうして、私は耳掻き師に耳かきをしてもらうことになった。
耳掻き師は左耳を掃除しだした。
まぁ、普通。物凄く気持ち良いわけではないが、悪いこともなかった。
しかし、自分の中での一番の興味は、『ここからどういう展開になるんだろう?』というところだった。
左耳が終わると、次に右耳を搔き出した。
少しすると、耳掻き師は「あっ!」と軽く驚き、ガーゼで自分の右耳の中を拭いた。
「なにかやっているな、、、」と思いながらもじっとしていると、少しして耳かきの終了が告げられた。
あ~、そう来るか、、
妙に真剣な面持ちをした耳掻き師は私にこう告げた。
「あなたの右耳は大変なことになっていた。中でバイキンが増えていて、あのままだったらヤバイ状況だった。しかし大丈夫。私が薬を塗っておいてあげたから。」
適当なでまかせを言っているのは明らかにわかる。
「あ~、そうですか。それでは、はい、20ルピー。」
と20ルピーを渡そうとすると、耳掻き師は抗議した。
(料金はハッキリと覚えていないが、そんな感じだった)
そう言う展開も想定していたので、先程に念を入れて確認をしていたのだ。
自分ははっきりと言った。
「何のオプションもいらないとはっきりと言ったでしょう?何があっても20ルピーしか払わないとも。」
耳掻き師は頑として譲らない。
「薬は非常に高価なものなのだ。20ルピーで良い訳がない!」
自分は更に続けた。
「薬をつけてくれとは頼んでいないでしょう?あなたが勝手につけたんだ。むしろ、勝手につけるのは良くないのではないですか?もしも自分がその薬にアレルギーがあったりしたらどうするのですか?むしろ、勝手に知らない薬を塗られた自分のほうが賠償金を請求してもいいくらいじゃないですか?」
「取り敢えず耳掻きはしてくれたので20ルピーは渡します。それ以外に払う気は全くありません。」
そう言いながら20ルピーを渡そうとすると、そんな提案は全く受け入れられないようだった。
そこで耳掻き師は次なる手段に出た。
結局は恫喝、、
耳掻き師は若い男を4人呼び集めた。こういう時のための仲間がいるようだ。
そして自分を取り囲ませると、こう言った。
「この日本人は治療を受けておきながらお金を払わないとんでもない奴だ!」
すると、周りの男達も
「それはおかしい!払え!払え!」
の連呼を始める。
アハハ、結局は恫喝か~。何だか考えが浅いな、、、
自分は何度も確認したことをその場の皆に告げ、はっきりと言った。
「払わないとは言っていないよ。しかし料金は20ルピーだ!」
すると、相手は脅しの度合いを強めてこう言った。
「それなら力ずくでも払ってもらうことになるぞ」
何でも来い!
相手は5人、やられるにしても相手に一泡吹かせることはできる。
何にしても、こんなカタチで約束を破るというのは気に入らなかったのだ。
「そうですか。もしそうであれば、自分も唯ではやられませんよ。」
この時はもうまさにリンチが始まってもおかしくない状況だったのだが、自分はやられることよりも何よりも、『大の大人が寄ってたかってやっていることがこんな詐欺だなんて、、、』というのが気に入らなかったので、彼らに自分の想いをぶつけた。
あなた達はそれで良いのか?
払わなければ、仲間と囲って脅す、、、
そんな事をして楽しいですか?
この本に『耳掻き詐欺』に注意せよとの記載があります。
今回のようなことが起こるようであれば、記載は注意せよ程度では済まなくなりますよ。
詳細な内容を私が投稿することになります。
それを読んだ日本人はこの公園には来なくなるでしょう。
あなた達は本当にそんな事を望んでいるのですか?
私がインドに来たのは、『インドで旅行なんかしたら楽しいだろうな~』と期待したからです。逆に『インドって、危ない人が多くて、最悪だから行かないほうがいいよ』と多くの人から聞かされていたら来なかったと思います。
実際に自分は今のところ、インドでの滞在を楽しんでいます。
『インド人は嫌な人達だった!』みたいな思い出を持って帰りたくはないのです。」
ドラマチックな展開♪
自分の中では、実際に喧嘩になっても何でもいいと思っていた。
そういう気持ちがあったので、素直に自分の気持をぶつけることが出来たのだ。
こういう『覚悟』というのは非常に重要だ。
この重要性は後々にも強く実感させられることになる。
そしてここから素晴らしい展開が始まったのだ!
自分の魂の叫びは、耳掻き師の応援に駆けつけていて大人たちの表情を変えた。
ざわざわとヒンズー語で話しだし(それまでは英語)、耳掻き師にこう言い出したのだ。
耳掻き師の方はまだまだ納得がいかないという感じで、終にはこんなことを言い出した。
「良し、分かった。なら耳掻き代の20ドルをくれ。」
へ?20ドル?!20ルピーと言ったじゃないか!
おかしなことを言うな、このおじさんと思いながら、聞いた。
「20ルピーですよね。ドルではなく。」
それに対する返答がまた子供っぽい、、、
と言い張りだしたのだ。
このおじさんには理屈というものは通用しないのは良くわかった。
しかし、ここでまた面白い展開に。
おじさんが自分を恫喝するために集めた仲間が、逆にお爺さんを制御し始めたのだ。
一緒に「そうだ!20ドルだ!」と捲し立てることも出来たはずだが、あまり良い気はしなかったのだろう。
こういうこと(詐欺)をするのには、それなりの背景があるのだと思う。何も好き好んでやっているわけでは無いと思うのだ。
自分は彼らに良心を思い出させることが出来たようで、彼らはいつのまにやら自分の応援団に変わっていた^^
「爺さん、20ルピーだよ。俺らも聞いていたよ。なぁ、もう良いじゃないか。爺さんもこんなところで頑張っているよりも、他の人の耳掻きをしている方がずっと良いんじゃないか?」
仲間から口々に言われた耳掻き師は渋々と私から20ルピーを受け取ってくれた。
感想
彼の表情にはまだまだ不満が残っていたので、恐らくその後も耳掻き詐欺は続けていたと思う。
しかし、詐欺の協力者の心に変化が出てきていたとしたら、もしかしたら、その後にそれが耳掻き師にも伝播したかもしれない。
以上が、詐欺と知りながらも、背景も含めてその現状を知ってみたいと思った私の体験記だ。
こんな性格だから、実はこの耳掻き詐欺以前にもタイで宝石詐欺を敢えて試したりしていた^^
さぁ、皆さんは自分で試してみたくなったかな?(オススメはしません(^_^;))
自分としては、海外旅行の醍醐味は、こういう人との触れ合い、文化との触れ合いだと思う。
インドの常識、ニュージーランドの常識、日本の常識、、、どれも物凄く異なる。
それを知ることで、日本の常識のみが常識であるわけではないことに気づける。
常識なんていうものはあやふやであり、人々の捉え方自体でどうにもなることに気づける。
その時、心は非常に軽くなる。
・サービス残業当たり前
・プライベートはまず会社の仕事が終わってから
・お金がなければ行きていけない
こういう考えが狭いものであったことに気づくから^^
このSTORYで伝えたいこと
- 当事者になって初めて気づくことは多い
- 本気で話せば、わかってくれる事がある!
- 一般に嫌な経験とされることも、実は素晴らしい体験になり得る!(自分次第)
- 普段と違う環境を経験するのは非常に有効だ!