繋がりで流れは生まれる

昔々ある所に体の大きい木こりが住んでいた。
崖の手前にある大きな大きな木を切りたい、、、そう思いながらも切れずにいた。
木は谷間に向けて傾いており、そのまま切り倒すと崖に落っこちてしまう。
縄をかけ、反対側に引っ張りながら切れば切れるのだが、この大きな木を支えられるほどの立派な縄を買うお金がなく思案していたのだ。

ある日、縄屋の娘が、もし良かったらうちの縄を使ってくれと申し出てきた。
「何でこのような高価なものを私に?残念ながらうちにはお金がないもので、、、」

娘は答えた。
「お金など入りません。一番有効に使ってくれる人に渡しなさいとの父の遺言です。父はこの縄を完成後まもなく息を引き取ったのです。」

(そうか、、あの頑固爺さん、亡くなったか、、、。本当はそんないい人だったのか、、、)

木こり 「かたじけない!このご恩は必ず!私は木を切ることしか出来ませんが、切りたい木がありましたらいつでもおっしゃって下さい。」

娘 「お気になさらずに、、うちには切る木もありませんし、それよりも私以外に木を切りたいと切望している方のために切ってくださいな」

(なんてことだ!これがあの頑固爺さんの娘か!)

木こり 「それではあなただけ何も得ることが出来ないじゃないですか?」

娘 「私も以前ならそう思っていました。でも、死ぬ間際に祖父が言ったんです。」

祖父『娘よ、、私は自分の縄は村一番だと自負していた。価値あるものを作っていると思っとった。はした金で譲るものではないようなものを作っているとな、、、。がめついおやじだ、、そう思われとったじゃろうな。わしはただ価値を認めて欲しかっただけなんじゃが、、。』

一息ついて

祖父「しかしな、、いまさらになって気づいたのじゃが、それじゃダメだったんじゃよ。それだとお金がない人はわしの縄を使えないことになる、、そこでじゃ、わしの縄の価値をわかってくれる、わしの縄を一番必要としてくれるお人に、この最後にわしが精魂込めて作った縄を渡して欲しいんじゃよ。お代は無しでな。」

娘 「ですから、この縄は是非あなたに使っていただきたいのです。」

きこりはその縄をありがたく使わせて頂き、目的の木を切り倒すことが出来た。
そこに、大工だと名乗る男がやってきて、「素晴らしい木ですね。家の梁に使える木を探しているのですが、こんな立派な木があればもってこいなのです。もし宜しければお売り頂けませんか?」

きこりは答えた。
きこり「まぁ、この木なら3両はするでしょうな」

大工はがっかりした顔をして言った。
「そうですか、、、そうですよね。あいにく私には払える額ではありませんで、、何とか家を建てておっ母を安心させてあげたいのですが、、。」

大工の顔を見て、娘から聞いた話を思い出した、、、、

(俺だってあの爺さんが縄をくれていなかったらこの木は切れていなかったんだ、、その恩は渡せる人に送れればいいと言ってくれたんだっけな、、)

考えなおした木こりは言った。

木こり「もし良かったらお使い下さい。お代はお気になさらずに^^」

言った後少し後悔はしたものの、喜ぶ大工の顔を見ていると何だか心が暖かくなるのを感じていた。

少しすると、村の子供たちが走ってきて、倒れている木の枝をくれと言う。
川で溺れた人がいて、家で温めてあげたいので薪に使うらしい。

(何なんだ、今日って日は!)
木こり「わかったよ!持って行きな!」

(つくづく俺も人がいいや、、、)

数時間後、子供たちが息を切らせながら走ってきた。
子供たち 「おじさん、助かったよ!溺れていた人が助かったんだ!おじさんのお陰だよ!助かった娘さんが是非、お礼をしたいってさ!早く来てよ!」

タダであげちゃうなんて、人がいい、、、そんな気持ちでいた木こりは気恥ずかしい気がしながらも子供たちについて行った。

そして助かった娘さんの顔を見て驚いた!
木こりに縄を無償で渡した、あの娘だったのだ。

木こり 「あなたは、縄を頂いた、、、」
娘 「あなただったのですね、私を温める薪を提供してくださったのは、、」

木こりはこれまでの経緯を娘に話した。
言われた通り、大工や子供が自分を必要としてくれたのでそれに応えたこと。そしてその際に「ちょっと勿体無いな、、」という気持ちは抱いてしまったこと、、、

すると娘も嬉しそうに微笑んでいった。

娘 「実は私もそうなんですのよ。あの縄は売ったらかなりの額になっただろうに!と何度思いましたことか、、、。でも、さすが私のおじいさん。祖父は言ってくれたんです。『恐らく“勿体無い!”、そう思うじゃろう。でも、娘や、聞いて欲しい。そうじゃないんじゃよ。病に伏せ、布団から出られなくなってようやくわかったんじゃよ。連日わしを気遣い、見舞ってくれるのは、お得意さんとかではないんじゃ。冗談を言い合った友達だけなんじゃよ、、、。わかるかい?相手に対して見返りを求めるようなのは“友達”ではなく、ただの“客“なんじゃよ。他人なんじゃよ、、、。わしはお前には友達を作って欲しい。友達を大切にして欲しいんじゃよ、、、、』ってね。」

木こり 「そうでしたか、、、あの爺さんがそんな事を考えていたなんて、、。それにしても、何とか少しはあなたのお役にも立てたようで、本当に気が楽になりました!」

更に数日後、木こりはいつもの様に木を切っていると、先日の大工がやってきた。

大工 「先日は素晴らしい材を有難うございました。もし良ければ使っていただこうと思いまして、、」

そう言って立派なはしごを差し出した。買ったらものすごい高価そうな素晴らしい、大型のはしごだ。

大工 「以前からあなたが枝打ちをしたりするのを見ていて、ハシゴを使えば楽なのになぁとは思っていたんです、、。私は大工だからはしごを作ることは出来ましたから。でも、ぶっちゃけ、何の特にもならないでしょう?知らない人にはしごなんか送っても、、、。でも、あなたは違った。私に気前よく材を提供してくれた!あんなのはハシゴをいくら作ったとしても手に入れることはできないものなのに!」

木こりはまたまた気恥ずかしい思いになった。
顔を赤らませながら、これまでの経緯を大工に話した。

大工 「うーむ、、、そんなことがあったんですか、、。あの縄屋の爺さんがねぇ。娘さんが助かったのも、元はといえば爺さんの話があったからなのかなぁ。それに!爺さんの話を聞いて娘さんがあなたに縄を上げていなければ、娘さんは助かっていなかった可能性が高い、、、」

木こり 「そして私はハシゴを手に入れられなかった可能性が高い(笑)」
大工 「あっはっは~、その通り!」

大工 「こりゃ、あの爺さんに一本取られましたな。今度は我々の番ですな!私は誰かが求めてくれるのであれば、無償で喜んで手伝ってみます!そしてそれまでの経緯を話すんです。、、、あれ?とするとまたあの爺さんが美味しいところ持っていくのかな?あはは、そんなのはどうでもいいか(笑)」

木こりは、爺さん、娘さん、大工、そして自分、、それらの繋がりについて深く考えを巡らせていた、、、

(あの一件がなければ、俺は対価を求めずに人に何かをしてやろうという気持ちにはなっていなかっただろう、、。そしてこんな温かい気持ちを経験することはなかっただろう、、、。)

今までであれば、縄屋の娘と客、大工と木こり、、、それだけの関係でしかなかっただろうが、今では違う。
何か結びつきを感じる、、。

町で会えば必ず声はかけるだろう。
たまに様子を見に行きたくもなるだろう。
いい木が切れた時にはおすそ分けに行きたくなるだろう、、、

大工の言った言葉が頭を巡っている。
「今度は我々の番ですな!」

木こりの口元はゆるみ、笑みがこぼれてくるのだった。

 

 

『繋がりで流れは生まれる』

繋がりを感じていない時、あなたは相手に対価を求める

家族や親戚、友達にはどうかな?
友達が家に来た時、お茶を出す。

帰りがけに、「一杯500円になります。」こんなことを言うかな?
でも、コーヒーショップではこれが当然。

何でかな?

でももし、そのコーヒーショップの店長が幼なじみだったら?
それが二年ぶりに帰省した時に訪れた、感動の再会の時だったら?

店の維持費、自分の生活費など、費用はかかる。
その費用負担を、店に来てくれる人に手伝ってもらうのはいいだろう。

でも、いつしかそれが繋がりを薄め、

「お金がなければ提供しない」
「金払ってんだから、文句ないだろ?」
「高い割に美味しくないわね~」

こんな関係になってしまったとしたら、、それはちょっと寂しいよね

繋がりは自分で生むことができるんだ

繋がりたい、、そう思うだけで

その想いは必ず相手に届くんだよ