『瞑想の仕方を教えて下さい!』 ~降りる駅なんて無いんだ~

「瞑想の仕方を教えてください!もう十年もやっているのですが、全然効果が感じられないのです。こんなに勉強しているのに、、、」

Bはそう言って、山のように積み重ねてある書物を指差した。

それを聞き、Aは静かに口を開いた。

「ある男が電車の乗り方を教えてくれと言った。

それに対し、ある人は◯◯駅から乗れといった。
またある人は□□の時間に乗れと言い、ある人は一番前の車両に乗れと言うが、一番後ろの車両に乗れという人もいる。

電車の乗り方を聞いた男は、言われるままに色々な乗り方を試してみた。
その電車は山手線と呼ばれ、周回コースをグルグルと回る乗り物だった。

彼はもう既に何十周もしているのに、一向に目的地につかないために不安になった。

これはなぜだか分かるかな?」

Aが自分のことを言っているのだろうと思い、少し考えながらBは答えた。
「山手線グルグル周っても意味は無いですね、、、。どこで降りるかを最初に決めておかないと」

Aはまた話しだした。

「そう、どこで降りるかを知りもせずに電車の乗り方を聞いても意味が無いね。さて、瞑想で皆が迷う理由はなにかわかるかな?」

Bはしばらく考え、そして答えた。
「う~ん、、、降りる駅がそもそもどこかわからない、、、ということですか?」

Aはニヤリとした。

「実は降りる駅なんか無いんだよ。ここが一番理解されにくいところだろうね。降りる必要なんか無いんだ。」

Bは困惑した。
「はぁ?それでは、瞑想なんてする意味はないということですか?」

それに対してAは説明を始めた。
「瞑想は必ずしもする必要はない。ただ、それは手段としては役に立つ。瞑想が電車にのることだとすると、瞑想があなたにもたらすことは、あなたを運ぶことではなく、車窓からの眺めをあなたに見せることだ。」

「乗り方なんてどうでも良いんだ。しかし、多くの人は乗り方にこだわり、そのことばかり考える。その結果、車窓からの眺めを見る余裕がなくなるんだよ。」

「多くの書物を電車に持ち込んで、それを忙しく読んでいたら、、、何十周しても周りの景色には気づかないんだよ。」

Bはこれらの言葉に熱心に耳を傾けていた。
思い当たるフシが沢山あったのだ。

Aの話が終わってからも、しばらくの間だまって考え込んでいた。

少ししてうつむき加減で考え込んでいたBの顔が上がった。その表情には明るみが差していた。
「ありがとうございます!今日はちょっと窓から外を眺めて見てみようと思います!」

Bが初めて『瞑想』に向かって歩み始めた瞬間だった。