Bはそう言って、山のように積み重ねてある書物を指差した。
それを聞き、Aは静かに口を開いた。
それに対し、ある人は◯◯駅から乗れといった。
またある人は□□の時間に乗れと言い、ある人は一番前の車両に乗れと言うが、一番後ろの車両に乗れという人もいる。
電車の乗り方を聞いた男は、言われるままに色々な乗り方を試してみた。
その電車は山手線と呼ばれ、周回コースをグルグルと回る乗り物だった。
彼はもう既に何十周もしているのに、一向に目的地につかないために不安になった。
これはなぜだか分かるかな?」
Aが自分のことを言っているのだろうと思い、少し考えながらBは答えた。
「山手線グルグル周っても意味は無いですね、、、。どこで降りるかを最初に決めておかないと」
Aはまた話しだした。
Bはしばらく考え、そして答えた。
「う~ん、、、降りる駅がそもそもどこかわからない、、、ということですか?」
Aはニヤリとした。
Bは困惑した。
「はぁ?それでは、瞑想なんてする意味はないということですか?」
それに対してAは説明を始めた。
「瞑想は必ずしもする必要はない。ただ、それは手段としては役に立つ。瞑想が電車にのることだとすると、瞑想があなたにもたらすことは、あなたを運ぶことではなく、車窓からの眺めをあなたに見せることだ。」
「多くの書物を電車に持ち込んで、それを忙しく読んでいたら、、、何十周しても周りの景色には気づかないんだよ。」
Bはこれらの言葉に熱心に耳を傾けていた。
思い当たるフシが沢山あったのだ。
Aの話が終わってからも、しばらくの間だまって考え込んでいた。
少ししてうつむき加減で考え込んでいたBの顔が上がった。その表情には明るみが差していた。
「ありがとうございます!今日はちょっと窓から外を眺めて見てみようと思います!」
Bが初めて『瞑想』に向かって歩み始めた瞬間だった。