『日常から離れ、自分の心の声に耳を傾ける』
こんな機会を持ちませんか?というのが『内観ワークショップ』の目的ですが、この深い意義に気づいている人は少ないと思います。
「忙しいのに、”静かに、ゆったり”なんてしていられる訳無いだろ!」
こんな思いを持つ人は多いでしょう。
これに対して、内観ワークショップは「その優先順位は本当に正しいのだろうか?」と自身に問う事になります。
このワークショップに千葉から高校二年生の男の子(Y君)が参加しに来てくれました。
Y君はこれまでにも『個別指南』や『瞑想指南』を受けに来てくれています。
赤岳登山に!
瞑想指南に来る方などにも多いのですが、『考えすぎ』るために感覚が鈍るケースが多いので、「山にでも登りながらまったりと思いを馳せる位がいいかな」と思いました。
Y君も登山にはかなり興味があるらしく、「金峰山、赤岳、どちらが良い?」との問に対して元気よく答えてくれました。
これがまさかあんなドラマを生むことになるとは、、、
テニスプレーヤーとしてトレーニングをしているY君からしたら、体力的には余裕でしょう。スイスイ~と軽快に登っていきます。
途中、ヤッホーと叫んでこだまを経験すると非常に喜んでいました。
街で叫んだら変質者扱いかもしれませんが、山ではOK♪
大いなる至難(指南)が!!
軽快に二時間半ほど登ったところで、Y君の表情は一変します。
実はY君は高所恐怖症だったのです。
30cmくらいの幅の金属の板の上を四つん這いで這うように何とか進みました。
かなり怖かったようです。
しかし、そこをクリアしても更に大きな壁がY君に立ちはだかります。
崖のような急勾配の鎖場です。
物凄く怖かったようです。足は震え、手からは物凄く汗が滲んでいました。
怖がっているのを見るのは気の毒でしたが、自分からすると「これは凄い機会だぞ!」と思いました。
Y君は色々な場面ですぐに緊張する癖がついています。そしてその緊張が彼の体調に変調をきたし、更に状況を悪化させるという悪循環にハマっています。
自分がY君にその事を説明すると、Y君はこう答えていました。
私はY君に言いました。
Y君は最初、諦めて下山させてもらおうと思っていたようです。しかし、彼は自分自身の心に向き合い始めました。
自分は横で景色を見たりしてくつろいでいると、Y君はシミュレーションを始めていました。
登る方向に考えが集中したようです。
シミュレーションの中では、「足がつる」、「手汗で鎖から手が滑る」、「足が滑る」と、、暗い場面ばかりが想定されていました。
そしてそのイメージが更に手に汗をかかせていたのです。
手汗をズボンで吹きながら、Y君は必死にシミュレーションを続けています。
自分は過去にY君に話した内容をここでまた話しました。
「Y君、今正に君は前の列に座り、酔い止めバンドを握りしめて頑張っている。それが手汗を出させているんだ。そして俺が後部座席のワルガキ。同じ場所にいながら、自分は『ここに綺麗な花があるな~』なんて思いながら写真を取っているだけなんだ。そして手に汗なんかはかいていない。わかるかな?」
「この鎖場が恐怖を生むものかどうかは自分が選択しているんだ。自分の過去のイメージが色眼鏡をかけさせているんだよ。という事は!!わかるかな?ここは非常に重要だよ。Y君は悪いイメージを思いおこさせるような経験を多くしてきているかもしれないけど、逆に良いイメージを想起させる経験を積んじゃったら状況は変わるっていうことだよ(^_^)v」
「それをまさに今!体験する機会が与えられているんだ。悪いイメージを良いイメージで上書きする機会がね!!」
最初の一歩が難しい
Y君は頭のなかでシミュレーションを繰り返し、何度も何度も不安を払拭しようと頑張っていました。そして、ついに登り始める決意をしました!
この間、どれくらいかかったと思いますか?10分?15分?
いや、一時間です。
彼はこう言っていました。
見ていて凄い強烈なインパクトが有りました。
踏み出しているつもりで足が数cmしか動いていないのです、、、それを何度も何度も繰り返していました。
しかし、ついにその一歩を踏み出しました。
イメージが上書きされた!
Y君は恐れながらも一歩を踏み出し、登り始めました。
もちろん登っている最中も怖かったようですが、登り始める前とはまるで違ったと言っていました。
落ちることに集中していた登る前とは違い、登ることに集中していたというのです。
そう、それは正に先ほどの話でいうところの前列の席から後部座席に移ってみたことに相当します。そして、その感覚を体験してしまったのです。
この効果がどれほどあるか分かるでしょうか?Y君の場合、劇的な変化をもたらしました!
山頂にたどり着くには、鎖場はその後も何回も続きます。
毎回、1時間も悩んでいたとしたら、とても登り切れません。しかし、、、、
彼が悩み、立ち止まってしまったのは最初の一回のみでした。
その後の鎖場では何と!
登っている途中、片手でスマートフォンを操り、下の景色の写真を撮ったりしていたのです!そのあまりの変貌ぶりに、自分がY君の写真を撮ろうとすると、片手をロープから離してポーズを撮ってくれたのです、、、、
そして遂に山頂に到着♪
『実体験』が気づきを!
Y君は帰宅後、こんな事を言っていました。
「なんであの時登ったのかな?不思議です、、、」
ああいうシチュエーションにおいて、初めて取った決断だったのかもしれませんね^^
「どう?あの時は死ぬほどに怖かったかもしれないけど、やってみたら良い経験だったんじゃない?」と聞くと、
「いや~、まさにその通りですね!」と笑って答えてくれました。
内観ワークショップの最終日、これまでの気付きや考えの整理をしていました。
その過程において、『イメージ上書きの実体験』は物凄く大きな手がかりを彼に与えました。
こんな効果を狙って山登りをしたわけではないのですが、このような展開はよく起こります。先日、京都から実習コースを受けに来てくれた方々にも同じような展開が起こりました。もちろん、何も考えていたわけではないのですが(^_^;)
そして自分からすると、『考えていもしないのに面白い展開に自然になる』事自体が物凄く面白いです^^
彼は今回の体験を通し、このようなことを言ってくれました。
「これはテニスの試合にも当てはまりますね。メモしておこう。」
う~ん、、彼も遂に探求者になりましたね~。
コントロール?そんなのいらないよ
Y君からこんな質問を受けましたが、それに対する私の答えは彼にはまだ理解が難しいでしょう。
この意味を本気で知りたくなったとしたら、そのタイミングでまた来てくれればいいな~
その時に実習コースを受けてもらえればわかってもらえるんじゃないかな~。
Y君の体験談
室田さん、3日間ありがとうございました!
一番印象に残っているのが、登山の時にあった急な斜面を鎖で登るという場面です。
やっぱり落ちて死ぬのは嫌だったので登山は諦めて降りようと思ったのですが、一時間くらい登るシミュレーションをしてようやく登ることができました。(急な斜面を)登る前と登った後では心に違いがあり、実際登った後では心に余裕ができ、片手を離して写真を撮る余裕もありました。
このことから今まで引っかかっていた事のヒントを得ることができました。体験に勝るものはない、まさにその通りですね^ ^